89.待ち人 sideA ページ15
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櫻井家の大きな玄関門の前で、待ち合わせた時間通りに…いやそれより少し前に来て
Aさんが来るのを待った。色んなこと考えながら、浮かれる気持ちを必死で抑えて、りんご飴買うのかなあとか、わたがし食べるのかなあとか。
嬉しそうに花火を見上げるAさんの横顔ぜってぇカワイイだろうな…とか
そんなことばっか考えて暇を潰す。
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A「雅紀くん！」
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彼女を待つ時間は、あっという間で、気がつけば門からAさんが出てきていた。
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雅紀「…、…Aさん」
A「ごめんね。少し早めに来てくれてたんだよね？」
雅紀「いや…、大丈夫」
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いつもと少し違う雰囲気に、ぐっと息を呑む。
浴衣とか着物とか…、いつもと変わらないはずなのに
いつもより少し明るい色をした浴衣に、高い位置で結われた髪。
ひょこっと添えられた大きな花飾りが可愛い。
落ちてくる後れ毛が色っぽく首筋をなぞっていて
濃い赤をした唇がやわらかく弧を描いて微笑んだ。
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いつもより化粧が厚いのかな。
大人っぽい？いいや、なんというか…。若いのだろうか。…いや、俺よりずっと年上なんだ、この人は。
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大人って、ずるいな。
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A「あ、あんまり上手くお化粧できなくて」
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A「雅紀くんや翔さまの周りの女の子のような派手な浴衣を着て、キラキラしたお化粧をしたほうが、並んで歩きやすいかと思って…、頑張ってみたんだけど」
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“うちにはそんな派手な浴衣がなかったから…、せめてお化粧だけでもって”
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そう言ってえへへと笑うAさんは、もうお願いだから何もしないでってくらい、俺にとっては破壊的可愛さで。
カァアっと熱くなる顔を見られるのはちょっとカッコ悪くて、
でも、Aさんもさっきから俺の顔あんま見てくれないから
俺は存分彼女の顔を見られる。
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雅紀「綺麗」
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速くなる心拍数に負けてたまるかと吐いた口説き文句は、どストレートで
それでも、一瞬俺を見て、目が合った瞬間視線を落としたAさんは耳まで真っ赤だった。
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作成日時：2014年3月16日 18時
