08.なんでもない日 ページ8
一子・二子「鬼灯様。なんでもない日おめでとうございます」
その声とチーンと言う陶器が当たる音に鬼灯は振り返る
振り返った視線の先には
10シリング6ペンスの値札をつけたままの帽子を被った一子と
情けなく垂れたウサギ耳付のカチューシャを被った二子がティーカップ片手に乾杯していた
鬼灯「ディズニーの影響を受けすぎです」
一子「辰巳が昨日DVD10枚借りてきたの」
二子「アラジンとヘラクレス見て泣いてた」
鬼灯「子供が見るのと、大人になって見るのではツボが違いますからね。
しかし、そんな個人情報はどうでもいいです。何してるんですか?」
一子「私達に誕生日はないから1年に1回のお祝いがないの」
二子「だからなんでもない日をお祝いしようと思ったの」
鬼灯「残念ながら、今日はなんでもない日ではありません」
鬼灯の言葉に衝撃を受けた一子と二子はティーカップを持つ手の力が抜け
角砂糖3つとミルクが半分入ったノンカフェインの紅茶を床にこぼした
鬼灯「今日は後輩の結婚式で職場の上司として初めて挨拶した日です」
一子・二子「…は?」
一子「じゃぁ明日は?」
鬼灯「初めて給料をもらった日です」
二子「じゃぁ明後日は?」
鬼灯「初めて学校をばっくれた日です」
一子と二子は「それって記念日か?」と思いながらも、カレンダーを広げて無作為に指を射し「この日は!?」と鬼灯に何度も問い続けた
それでも鬼灯の「なんでもない日」は無く、何かと記念日をつけられてしまった
次第に「適当に言っているのではないか?」と疑問を抱いた一子と二子は同じタイミングで、同じ日付を指さした
一子・二子「じゃぁこの日は?」
鬼灯は一瞬眉間に皺を寄せると目を閉じ、フッと鼻で笑った
鬼灯「その日は私が一子と二子に初めて会って、地獄に連れて帰った日です」
嘘やでまかせでなく鬼灯はちゃんと全部覚えていた
覚えていてもらえたことも嬉しかったが、自分たちも鬼灯の記念日に入っていることが何よりも嬉しかった
鬼灯「確かに私達に誕生日はありません。だから1年に1回のお祝いが無いんですが…。
でも、365日が私にとっては記念日であって、皆との出会いを祝う毎日なんです。
なんでもない日なんて…そんな寂しい日を祝ってどうするんですか?」
一子「そんな日ないもん」
鬼灯「じゃぁ今日は二人にとって何の日ですか?」
二子「内緒」
そう言いながら二人は鬼灯に抱きつく
今日は
鬼灯様への大好きが大きくなった日
2014.12.4
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作者名:辰巳 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/toshi6411/
作成日時:2014年11月21日 16時