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40.白壁の誓い ページ44

何が現実で、何が夢で、何が幻覚なのかさっぱりわからなくなってしまった

それでも病室のベッドで横たわっている私の目の前には花束を持った唐瓜が立っていた

病室を見渡せば、私が投げつけた枕は床に落ちたままで、鉢植えの花などどこにもなかった

唐瓜「ごめん。さっきは辛そうだったけど、やっぱりAともっと一緒にいたくて」

A「唐瓜…ごめん」

たぶん私はこの時初めて唐瓜に謝った

今まで言うはずで「また明日」と先延ばしにしていつも言えなかった言葉

言ってしまったら何か区切りがついてしまうようでとても怖かった言葉

唐瓜「え?なんでAが泣くんだよ?」

A「唐瓜」

私はボロボロと涙を流しながら、滲む視界の中、唐瓜がいる方向に向かって両手を広げる

唐瓜「ここに居るよ」

唐瓜はそんな私を抱きしめ、優しく背中をさすってくれた

A「唐瓜はいつも私の為に色々としてくれるのに、調子に乗って我儘をいっぱい言ってごめんなさい」

唐瓜「我儘だなんて思ってないよ?」

A「唐瓜が私を大切に思ってくれてるのはちゃんとわかってる。わかってるよ?
でも、私が知らない唐瓜がいるのが悔しくて、ついつい欲深くなっちゃって…」

唐瓜「別にいいのに」

深呼吸をして思い起こす、私の中の茄子の言葉

茄子『言って死ぬよりも、言わないで死ぬ方が絶対に後悔すると思うよ?』

私はずっと後悔してきたから心休まる時が無かった

私が解放される事は、同時に唐瓜の束縛を意味する

唐瓜。もう何もしなくてもいいから、私の最後の我儘を聞いてくれる?

A「私はいつ死んでしまうかわからないから、唐瓜とずっと一緒にいられる事は出来ない。
だから無責任な事は言いたくなかったけど…
唐瓜。大好きだよ?愛してるよ?
…本当はずっと一緒にいて欲しいし…ずっと私だけを見ていて欲しい」

言ってしまった

唐瓜を更に困らせる言葉

優しい唐瓜でもこれは流石に…

唐瓜「知ってるよ」

A「は?」

唐瓜「ぼけてた時に全く同じことを言ってたから」

唐瓜はあの時と同じ表情をしてみせるが、今日は目線をそらさず私を見つめていた

唐瓜「俺こそちゃんと言葉にしてなくてごめんな?
俺もAが大好きだし、愛してるから。
先の事は気にしなくていいから。だからちゃんと毎日確かめさせて?」

A「飽きるほど言ってやるよ。
唐瓜…愛してるよ」
2014.12.24

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作者名:辰巳 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/toshi6411/  
作成日時:2014年11月21日 16時

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