夏の約束 ページ40
A「茄子は宿題やった?」
茄子「まだ」
A「私もまだ。唐瓜に見せてもらおうか?」
唐瓜「宿題は自分でやらないといけないんだぞ?」
A「唐瓜のケチ」
唐瓜「俺はAの事を思って…」
A「こんな勉強したところで先は短いんだから」
唐瓜「そんな事言うなよ!!」
誰からも愛されて育った唐瓜は
有り余った愛情を私にも注いでくれていて
こんな些細な事でも悲しんで涙を流してくれる
A「唐瓜の泣き虫。今日は外出許可が出たんだ。外でスイカ割りしようよ」
茄子「わ〜い♪」
照り返すアスファルト
アブラゼミが鳴く音が暑さを強調させる
A「あ゛…あ゛つ゛い゛」
唐瓜「A大丈夫か?」
A「大丈夫。これがヒグラシの鳴き声なら涼しげだったのにな。
セミはさ3〜17年地下で過ごして、地上では1〜4週間しか生きられないんだって。
そのくせにうるさすぎるよね」
茄子「セミだって暑いって叫んでるんじゃない?」
A「うっと〜しぃ〜なぁ〜」
唐瓜「短命だからこそ、『生きてるんだぞ』って声をあげて自己主張してるんじゃないの?」
死にたいと思った事は無いけど
いつ死んでもおかしくない状況から
死ぬのが怖いと思った事もない
死への抵抗がなかった分、生への執着も無かった
だから大きな夢を持つことは無縁で
とりあえず明日1日笑顔で唐瓜達と過ごせたらいいと思っていた
そんな小さな目標を積み重ねていくだけの私の人生はセミ以下ではないか?
A「唐瓜と茄子の夢は何?」
茄子「俺は画家になる事」
唐瓜「新卒で画家1本は無理だろ?俺と一緒に獄卒として働こうよ?」
A「唐瓜は獄卒になりたいの?」
唐瓜「うん。必要最低限の学力で就職できるから」
それは…学校に通えていなくても?
A「なら…私もなってみたいな」
唐瓜「え?」
茄子「いつでも待ってるからね」
唐瓜「うん…いつになっても待ってるから」
A「ありがとう」
数年後
「Aさん今から手術室に行きますね」
唐瓜就職おめでとう
一緒に獄卒になれなかったのは残念だけど
私は今日も君の為にまた生き延びてみせるから
もう少し待っててね?
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作者名:辰巳 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/toshi6411/
作成日時:2014年11月21日 16時