【鬼灯の冷徹】誰も何も望まない短編集完結 (ページ36)

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36.上客と檎ページ36

最近よく店に来るA様

通い慣れていないからか、指名する事なく空いている女と飲んで満足しては帰っていく

太鼓持ちとして何回か一緒に付いたことも、買い物にも行った事がある

妲己「似合う？」

A「とても良く似合うよ」

妲己「本当に？」

A「ああ。彼女が身に付けているもの全部下さい」

茶道か花道か何かの家元とあって、白澤様並に羽振りがいい

A「檎は何が欲しい？」

檎「え？ワシ？」

A「何でも言いなさい」

白澤様以上に羽振りが良かった

でも、A様の印象はただそれだけだった

檎「今日は忘年会、新年会のシーズンとあって立て込んでいるんです。
部屋にはお通しできますが、今しばらく待っていてもらえませんかのぉ～」

A「私は檎が居てくれればいい」

檎「ん？ワシはただの太鼓持ちじゃよ？」

A「私は誰よりも檎がいい」

最初は何の事かと思ったが、A様の目を見て理解した

檎「妲己様に呼ばれとるから…ワシは…」

速やかに退室しようとするが、腕を掴まれて引き留められる

A「気付かないふりをするのか？」

檎「なんの事ですか？」

白を切ってみるが、A様の目を真っ直ぐ見る事が出来ずに目を逸らす

A「私は女よりも、お前に会いたくて店に通っていたんだ。
やっと二人きりになれたと言うのに…お前は私を一人置いていくのか？」

最初の大胆な発言と行動はどこへやら

A様は黒目の大きな目を子犬のように潤ませていた

檎「うっ///…少しだけなら」

少しだけ

そう、少しだけ話し相手になってやれば満足するだろうと思っていたのに

A「言ったな？」

落ち込んでいたはずのA様に手も口も塞がれ口内を弄ばれる

檎「A様!?」

A「夜は短いんだ。事を急ごう」

檎「んに゛ゃぁー!!?」

A様は花道の家元でたった一人の跡継ぎだった

だから思う存分我儘に育てられてきたが、その分社会に出るのも早かった

そして人の反応を見ては上手に情けを買い、相手を手玉に取る様に操っていた

A「檎は何が欲しい？」

檎「弱みを握られるくらいならワシは何もいらん!!」

A「残念だな…では私を檎にくれてやろう」

檎「もっといらんわ!!?」

そうとわかっていながらも、A様の愛嬌の前では怒りも忘れ、なぜか弄ばれてもいいと思ってしまった
2014.12.17
☆着物着てて図々しい人いいですね