15.☆鬼灯様と白澤様に取り合いされる話(甘) ページ15
あの世で漢方や薬草といえば、桃源郷の極楽満月に行けば何でもそろう
だから鬼灯は白澤が嫌いでも、仕事のために極楽満月に通っていた
しかし、最近の鬼灯は桃源郷よりもはるか遠い現世の江戸川満月に通うようになっていた
それは白澤の顔を見なくて済むからという理由もあったが
A「いらっしゃいませ」
一番の理由はこの江戸川満月でアルバイトをしているAに会いたかったから
鬼灯「お願いしてたものはできてますか?」
A「ごめんなさい。材料はそろってるんですけど、私の知識で漢方薬までは作れませんでした」
鬼灯「いえ。無理言ってお願いしたのは私だからいいんです。ありがとうございました」
Aは植物学者の卵であって、薬草についての知識は店長よりもずば抜けており、店の商品の仕入れはAが行っていた
しかし、植物の特徴を知り尽くしたAでも、白澤ほどの漢方を作る技量と知識は持ち合わせていなかった
A「鬼灯さんは遠いところから来ていると店長から聞きました。
なのに何度も足を運んでもらって、その上役に立てなくてすみません」
Aは申し訳なさそうにうつむいて両手で頭を掻いた
鬼灯「そんなに頭をかくと髪が乱れてしまいますよ」
鬼灯はAの手を止めると、Aの髪を手櫛でといて整えた
Aの細く柔らかい髪が指に絡まるたびにAのシャンプーの匂いが鬼灯の鼻をかすめた
鬼灯「いい匂いですね。シャンプーは何を使ってるんですか?」
鬼灯はAの頭に顔を近づけて尋ねた
A「何だったかな?親が買ってきたやつを使ってるだけだからよくわかりません」
女の子であれば多少は照れるであろうこの距離感も、シチュエーションもAには通じなかった
少女漫画やファンタジー、メルヘン、女子力とは無縁で、化粧もせず、植物図鑑を片手に現世の薬草を探し歩き回るA
そんなAの手には収穫の際にできたであろう擦り傷がいくつもあった
鬼灯はそんな飾り気もなく、自分の趣味を貫き通す努力家のAを好いていた
鬼灯「じゃぁ漢方はもういいので、次来る時にはそのシャンプーの銘柄を教えてくれませんか?」
A「いいですよ」
不思議な客が多く訪れる江戸川満月
そこのアルバイトのAは客と壁を作らず、また客に疑問を持たない
だから鬼灯が同じシャンプーを使って、Aの匂いに包まれようとしていることに気付くはずがなかった
2014.12.7
16に続きます
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作者名:辰巳 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/toshi6411/
作成日時:2014年11月21日 16時