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心臓がドクドクと脈を打つ。
動きを持って胸の奥で暴れて、呼吸ができない。
最後に“
胸のあたりが苦しくてギュッと包み込むけど、そんな手のひらを突き刺すように心臓は拍動の強さを増していくばかりだ。まるで自分のものじゃないみたい。
感じたことの無い胸の高まりに頭がくらくらする。
それと同時に甘ったるい熱情のようなものが胸の奥から這い上がってきて、体の冷たさとの温度差にゾクゾクと鳥肌が身体を覆う。
…まさか、グクが私を好きでいてくれてたなんて。
それって、私と同じ感情なの?もしそうなら、どうして無理やりにでもあの時グクを引き止めなかったんだろう。今更後悔しても何にもならないのに、自分を責めずには居られなくて。早く手紙を読んで、グクの姿を追ってれば間に合ったかもしれないのに。
いつの間にか溢れた涙が手紙の上に落ちて、その水滴はじわりと文字を濁らせる。好きだ。どうしようもないくらい。頭では冷静にならなきゃって思ってるのに、心はグクへの想いと後悔、それにギラギラと火をあげるような熱情でぐちゃぐちゃになっていて何も考えられなくなる。ぺたりと冷たい手を顔に当てれば、一瞬にして頬の熱で熱くなる手にだんだん恥ずかしくなってしまった。どれだけ拭いても溢れる涙はしつこくて嫌になる。でもそれ以上にグクの気持ちが嬉しくて。少しずつ上がる口角に知らないフリをして手紙を封筒に戻した。
だけどその手紙が視界から無くなれば、一気に不安になってしまった。もしかしたらグクは私からの言葉を待ってたのかもしれない。いつまでもグダグダと区切りのつかない私に愛想をつかしたかも。それに、アメリカへ行ってまた違う恋でもしていたら。私なんて眼中に無いんだろうか。そう思い始めたらもう心を覆う青い感情は止まらなくて、さっきとは違った涙が頬を伝う。
「…ばか、」
自分が醜い。最悪だ。
もっと早く伝えておけばよかった。
グクは忘れろなんて言うけど、
そんなの無理に決まってる。
私の心にいるのはグクだけで、
それを忘れる方法なんてないんだよ。
きっと生きてる限り、愛してる限り、
あなたを想わない事なんてないんだろうな。
だから、
グクが帰ってきたら、一番に言おう。
あなたの事を愛してる、って。
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作者名:toryukina | 作成日時:2020年9月28日 17時