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ぽつんと、公園にいるのは私1人だけで。
呟いた一言を最後に、グクはキャリーケースを転がして行ってしまった。
こんな別れ方、あるだろうか。
グクへの気持ちに気づいて、
一緒に抱き合って、
気持ちを伝えようと思ったらキスされて?
その上それをなかったことにしろと。
意味わかんない。
心ではそう悪態をつくけど、足はさっきのキスで溶かされてふらふらだし腰は抜けるしで身体が動かない。
このまま待ってればグクが戻ってきてくれないかなと思ったけど、さっきの言葉を思いだしてやめた。
「…ふ、」
感覚のない指を唇に当てれば、さっきのキスを思いだして。グクの私を見つめる瞳が頭に浮かんで、堰を切ったように涙があふれる。
終わってしまった。
初めてにして、呆気なく散った恋。
大好きだった。家族のように接してくれる優しいグクも、“男”の目をして私を抱くグクも。
きっとあの様子からすれば、そんな気持ちを抱いてたのは私だけなんだろうけれど。
「…グク」
もう、会いたい
早く抱きしめたい
ここは、ずっと一緒にいようって誓った場所なのに。
…まさか別れを告げられるなんてね。
涙なんか止まるはずもなくて、人がいないのをいい事に大きな声で泣いた。
グクがどれだけ大きな存在だったかを思い知らされて。好きで好きでどうしようもない。
今更、遅いのに。
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久しぶりに実家に帰った。
誰もいない夜を過ごすのはあまりに悲しくて。
私の泣き腫らした目を見た父と母は驚いていたけど、何も聞かないでいてくれた。
いい親を持ったなと感慨深くなっていれば、同時に亡くなったグクのお父さんを思い出してしまう。そうすれば必然的にグクの嗚咽と、あの深いキスも頭に浮かび上がって。
また溢れてきそうな涙を堪えて布団に潜ったら、呆気なく意識は飛んだ。
17歳の誕生日。
_______私はあなたを見失ってしまった。
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作者名:toryukina | 作成日時:2020年9月28日 17時