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涙目のグクがこちらを見てそんな嬉しいことを言うから。素直にありがとうと返せば、また腕を伸ばすグク。
もう一度抱きしめてくれるのかなって、それに応えるように私も腕を伸ばした。なのに。
ピタリとグクは腕の動きを止める。そして、何も無かったように前を見てブルブルと頭を振って。
どうしたのか気になったけど、口に出すのは私がハグを求めているようで恥ずかしい。
JK「…だめだ、触れたくなる」
「え?」
自分の拳をぺちぺちと叩くグクの言う意味がわからなくて聞き返すけど、こちらを見て微笑むだけで何も言ってくれない。
JK「そろそろ行くね、飛行機夜の便だから」
「ちょっ、え?」
唐突な重すぎる内容にこっちは訳が分からないのに、
グクはヒラヒラと手を振るだけ。
「ちょっと待って、まだ何も言えてないよ」
こんなに直ぐに行ってしまうなんて誰が考えるんだろう。もしかして今日休んだのは荷造りのため…?
やだ、やだやだ
駄々を捏ねたらグクが困るって分かってるのに、グクがいなくなるという事実に直面すれば、さっき止まったはずの涙がポロポロと溢れ出す。
JK「…泣き虫、直らないね」
泣く私を見て困ったように笑うグクは、自分の服の袖でゴシゴシと私の涙を拭う。その動作は普段のものではなくて。いつもなら手で頬を包むようにして、暖かい手で拭ってくれるのに。
なんだか全てが寂しくて、生ぬるい風に嫌気がさす。
目の前の彼はいつまでも私のそばに居てくれるって、そう思ってたのに。こんなふうに、呆気なく消えちゃうんだ。
「…やだ、行かないでよ」
言っちゃいけないと喉元で必死に止めていた言葉も、流れ落ちる涙とともに簡単に溢れる。
それでもグクは、眉間にギュッと眉を寄せて唇を噛むだけで。
JK「あ、そうだ」
何かを思い出したように背を向けたグクは、トランクの中をゴソゴソと漁っている。
こんな時になんなんだと眉を顰めていれば、
何かを持って振り返ったグクが目じりにしわを寄せて微笑んでいて。
…こんな笑顔、久しぶり見たな。
JK「お誕生日、おめでとう。
今日で17歳でしょ?」
「…………あ、ほんとだ。」
綺麗にラッピングされた小さなボックスと共に渡された手紙。
…そうだ、今日私の誕生日だっけ。
「…覚えててくれたんだ」
JK「当たり前でしょ」
そうやって鼻を鳴らして笑うから。
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作者名:toryukina | 作成日時:2020年9月28日 17時