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「んん…」
なんだか腰のあたりに違和感を感じて重い瞼を持ち上げた。ズクズクと疼く子宮を抑えたら、そこに一回り大きな手が重ねられたから驚く。
TH「痛くしてごめんね、Aさん」
「…テヒョンくん、」
心配そうに眉を下げたテヒョンくんは少しだけ髪が伸びていて、その汗ばんだ黒髪の隙間から覗く茶色がかった瞳がじっとわたしを捉えていて。テヒョンくんだ。昨日はその存在をまともに受け入れる間もなかったせいか、改めて彼を見ればまた腰が疼く。
「…おかえり」
色々聞きたいことはあったけど、不安そうにわたしの顔を覗き込む彼を受け入れてあげたくてそう言えば、瞳を丸くさせたテヒョンくんは嬉しそうに笑う。
TH「ただいま」
彼らしい温かい声で呟かれたその言葉を大切そうに発するから。自分の求めていたテヒョンくんだ、って思えば泣きそうになって。
くしゃりとふわふわの頭を撫でれば、猫みたいに気持ちよさそうに目を閉じる。それが愛おしくて、彼の大きな身体をぎゅっと抱きしめた。
TH「ん〜、あったかい
…Aさんだ」
そう言ったテヒョンくんの手は有り得ないほど冷たくて。一晩ベッドで温めても良くならないほど、しんどい思いをしていたのかな。そう思えばぬくぬくと生活していた自分が憎らしくて、目頭が熱くなる。
TH「なんでなくの、」
「泣いてないよ」
TH「嘘」
途端に彼との距離が近くなったと思ったら、ペロリと軽く涙を舐め取られた。なんか一気に距離感近くなったな、なんて思いながら、ああ一線越えちゃったもんなとぼけた頭を働かせる。後悔してるのかと聞かれたら頷きはしないけど、かと言って正解かどうかなんてさらに分からなくて。
TH「Aさん、」
「ん?」
TH「すきってなに?」
くるんと可愛らしい効果音でも付きそうな瞳を丸く光らせて、突然テヒョンくんはそんな事を問う。
「なんで?」
TH「さっき言ってた、Aさん
寝言」
「あ…好きっていうのはほらあれ、
愛情って分かるかな、人やものに心惹かれる事だよ」
思いがけない恥ずかしい自分の話にテンパってるのが彼にまで伝わってしまったかな。だったら尚更恥ずかしいよ。
TH「ふうん…
じゃあAさんは誰を想って好きって言ったの?」
「そ、れは
ほら。…えっとね
夢の中に好きな動物がでてきて」
TH「………なんだ」
そうやって眉を下げないでよ
そうやって肩を落とさないでよ
TH「…おれなら良かったのにな」
勘違い、しちゃうじゃんか
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toryukina(プロフ) - 月花さん» ありがとうございます泣『テヒョンくん』という設定はございますが、ご本人様の芯の強い真っ直ぐな部分は削らず活かして描きたいなぁと常に考えながら執筆してきましたので、まさかこんな素敵なお言葉が頂けるなんて感謝感激です、是非完結までお付き合いください。 (2021年4月25日 2時) (レス) id: d3fbdbb496 (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - テヒョンの儚さと一途な真っ直ぐな感じに引き込まれます!どんどん読み進めたい欲が出て来ます(笑) (2021年4月25日 0時) (レス) id: 648d58e66d (このIDを非表示/違反報告)
toryukina(プロフ) - (*'^'*)さん» ほんとですか!?沢山お褒めの言葉を頂けて、嬉しい限りです。ありがとうございます!これからもご期待に添えますよう、努力します(^^)完結までどうぞお付き合いくださいね。 (2020年5月26日 11時) (レス) id: 9e983f2ae7 (このIDを非表示/違反報告)
(*'^'*) - めっちゃよかったです! 私はテテペンなので、読んでて最高でした!心臓、バックバクでヤバイです。 こんな話を作れるなんて、天才ですね。うらやましいです。続きが気になります!次の話も楽しみにしてます! (2020年5月22日 14時) (レス) id: 18287f45f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:toryukina | 作成日時:2020年5月8日 13時