13 ページ13
目が合ったテヒョンくんは優しい目をしていて、その瞳にどくどくと胸が鳴る。私の頬に触れる手をそのままくるりと円を描くように滑らせて、じっとわたしを見つめる。
その不思議な雰囲気に苦しくなって、
負けるまいとテヒョンくんを見つめる。
お互い穴が空くほど見つめあえば、
周りの音が聞こえなくなるから不思議だ。
｢…っ｣
突然テヒョンくんの顔が近づいたと思えば、そのまま止まることなくするりと頬を合わせられた。キスでもハグでもなく、少し重なった頬の温もり。じんわりと彼の熱が届いて、バクバクと心臓が荒れる。どうしたの、急にこんな。そう問いたいけど、耳元にかかる吐息が何も考えられなくしてしまう。
少しして離れた頬はまだ熱を持っていて、
合わさったままの瞳を俯きがちに見つめた。
TH｢…かわいい、Aさん｣
｢なんっ…｣
満足気に笑った彼の口からそんな言葉がするりと出てくるものだから驚いてパクパクと声にならない言葉を発していたら、また楽しそうに笑うテヒョンくん。
今までに数回目にした、
四角い口が特徴的なテヒョンくんの笑顔。
TH｢っ…そんな見ないで｣
私が見つめすぎてしまったせいか、
ばっと手の甲に額を押し付けて顔を背けたテヒョンくん。長い指の隙間から見えた頬はほんのり赤くて、思わず口角が上がる。
｢や、なんか幸せだなあって｣
TH｢…しあわせ？｣
｢うん。ここ一人で住むには広いでしょ？
パートナーなんていなかったから、大きすぎるんだよね。なんか独りだって思い知らされてるみたいで。
でもテヒョンくんが来てから
家に帰るのが楽しみなの｣
率直な気持ちを口にすれば、
少しだけ微笑んだテヒョンくんが、
最後に軽く首を捻りながら悩むような仕草をして。
TH｢… Aさんのそばに居てくれる人なら
おれじゃなくてもよかったんだ｣
普段はそこまで感情を見せないテヒョンくんが、
そう言いながら拗ねたように口を尖らせる。それに驚いたのと同時に少しだけ嬉しくなって。
｢そうだって言ったら？｣
TH｢…もうAさんの髪乾かさない｣
ぷいっと顔を背けたテヒョンくんが愛おしいと思った。その大人びた容姿とはアンバランスな態度と言葉に、彼がわたしよりも年下だったことを思い出す。
｢ふふ、ごめんね？
テヒョンくんじゃなきゃだめだよ。
だから怒らないで、ね？｣
TH｢…うん、ひひ｣
わたしの瞳をじっと見つめて目を細めたテヒョンくんに、釣られてわたしも笑顔を浮かべた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 839人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
toryukina(プロフ) - 月花さん» ありがとうございます泣『テヒョンくん』という設定はございますが、ご本人様の芯の強い真っ直ぐな部分は削らず活かして描きたいなぁと常に考えながら執筆してきましたので、まさかこんな素敵なお言葉が頂けるなんて感謝感激です、是非完結までお付き合いください。 (2021年4月25日 2時) (
レス) id: d3fbdbb496 (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - テヒョンの儚さと一途な真っ直ぐな感じに引き込まれます！どんどん読み進めたい欲が出て来ます（笑） (2021年4月25日 0時) (レス) id: 648d58e66d (このIDを非表示/違反報告)
toryukina(プロフ) - (*'^'*)さん» ほんとですか!?沢山お褒めの言葉を頂けて、嬉しい限りです。ありがとうございます！これからもご期待に添えますよう、努力します(^^)完結までどうぞお付き合いくださいね。 (2020年5月26日 11時) (レス) id: 9e983f2ae7 (このIDを非表示/違反報告)
(*'^'*) - めっちゃよかったです！ 私はテテペンなので、読んでて最高でした！心臓、バックバクでヤバイです。 こんな話を作れるなんて、天才ですね。うらやましいです。続きが気になります！次の話も楽しみにしてます！ (2020年5月22日 14時) (レス) id: 18287f45f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：toryukina | 作成日時：2020年5月8日 13時
