’３ 救 ページ5
・
「...それでも、それでも祖父母は人間に殺されたでしょう。」
エメは必死に両親を諭そうとしている。
人間に会ったら間違いなく殺される、そう思ったのだろう。
当たり前だ。
エメは祖父母が殺されるところを目の前で見たのだ。
両親と一緒に。
痛みで叫ぶ祖父母を両親とエメは助けることが出来なかった。
怖い、恐ろしい、といった感情で心が蝕まれ、羽で逃げる事しか出来なかった。
だが、両親はそれを無かったことのように振舞った。
いつまでも人間に忠誠を誓っていたのだ。
だからこの提案に首を縦に振ることは無かった。
「それでもだ。エメ、お前だって人間に救われただろう。
病気で苦しんでいたお前に唯一合う薬を渡してもらっただろう。
僕達は皆、人間に救われているんだよ。」
ファクティスは優しくエメを諭そうとする。
だが、それはエメには何も効かなかった。
そしてついに痺れを切らしたのか、
「私が救われたのは、何百年も前ですけどね！」
と言い、書斎を出ていった。
・
「どうして、どうしてっ...。」
エメは黒く大きな羽を使って長い階段を上っていく。
蝋燭に淡く涙が照らされる。
エメにとって両親は狂信者にしか見えなかった。
さっきのあの言動が怖くて仕方がなかったのだ。
エメはその後自室に閉じこもり現実逃避するため
嫌いな朝日が昇るまで本を読みふけった。
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(豆知識みたいなやつ)
ディアブルの屋敷には、人間の世界で居場所を失った悪魔が住み、
奉仕活動を行っている。
姿形は様々。寿命も様々。
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