’1 夜更け ページ3
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「屋敷の皆様、お夕飯の時間です。」
メイドたちの声が屋敷内に鳴り響く。
「...相変わらず大きな声ですね。」
金髪の少女、エメは本を閉じ椅子から腰を上げる。
窓越しに外を見ると大きな月が真っ暗な空に佇んでいた。
「もうこんな時間ですか...。片付けが終わりませんでしたね...。」
部屋を見渡してみると、本が床に大量に積まれていた。
その本の多さはメイド全員が片付ける匙を投げた位だったが、
何故か埃一つ被っておらず異常な程空気は綺麗だった。
少し溜め息をつき、エメはぎっしりと本が詰まった本棚に本を押し込んで
部屋から出ていき、少し騒がしい大広間へと向かった。
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「ここの席は僕のー!フェリのはあっち!」
「なんでー!交代交代なんだから次は私だもん!」
大広間にエメが着くと、
フェリとシヨンが席の取り合いをしていた。
今は冬だからだろう、その席は暖炉が近いから温かい。
二人はどうしても温かい席に座りたいのだろう。
「フェリ、シヨン。喧嘩はやめなさい。メイドたちが困っているでしょう。」
二人の後ろでは専属のメイドたちが困った顔をして立っていた。
フェリとシヨンはそれを見ると反省したような顔をして項垂れる。
「「はぁい...。」」
「...しょうがないから、今回は二人のどちらかは私の席に座っていいですよ。
風邪でも引いたら困りますからね。」
エメの席は二人が取り合っていた席の隣にある。
あまり暖炉からの距離も変わらないからそっちのほうがいいと思っただろう。
二人はその提案に目を輝かせた。
「ほんと!?じゃあ私お姉ちゃんの席座る!」
「えぇ、いいですよ。シヨンはこれで大丈夫ですか?」
「うん!よかったね、フェリ!」
(この子たち、単純で良かった...。)
エメは心からそう思った。
ここでまた席の取り合いになったらご飯が冷めてしまうからであろう。
そして全員が席へと着いた。
大広間は薄暗く蝋燭が光っている。
エメたちの周りは大勢の角が生えたメイドたちが囲んでいた。
「...全員揃ったわね。それでは、この世界の人々に感謝をして...
いただきます。」
「「「「いただきます。」」」」
母親、スクレが挨拶をすると同時に他の家族も挨拶をし、
一斉に食べ始める。
その食材は人間が食べるものと同じような野菜や肉、スープだった。
大広間にはカチャカチャと金属製のナイフやフォークを
動かす音だけが響いていた。
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