’10 村へ ページ13
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「わぁい!僕も行っていいの?ありがとう!」
その後フェリのように駄々をこねるシヨンを説得しようとしたが、
結局失敗し連れていく事になった。
フードはエメが替えを持っているのでそれを使うらしい。
そしてとうとう三人は門を抜け、手を繋ぎながら深い森の中へと入っていった。
草木の揺れる音や遠くの川の流れる音、熊の声。
耳の良い三人はそれは屋敷内でも聞こえるものだったが、
こんなに近くで聞いたのは初めてだ。
見たことの無い景色にシヨンは怖がっていたが、フェリは平然としている。
そしてフェリは暇だったのかエメに一方的に話をしていた。
「ねぇねぇ、にんげんって角と翼は無いってホントかなぁ。」
「.........。」
エメは下を向いて何かを考えているようだ。
「優しい人だといいな。ね、お姉ちゃん?」
「.........。」
「...お姉ちゃん、どうしたの?何だか怖いよ...。」
フェリはエメの顔を覗き込みながらそう言う。
エメは険しい顔をしていた。
エメラルドグリーンの瞳が燃えるように光っている。
だが、その言葉で我に返ったのかすぐ元通りに戻った。
「あっ、ごめんなさい。少し考えていたんです。」
「えー?何を?」
「ふふふ、内緒ですよ。まだフェリたちは知らなくて大丈夫です。」
エメはいつも通りに笑いながらそう告げる。
その顔をフェリとシヨンは不思議そうに見つめていた。
「...?姉ちゃん、今日何だか変...。何かあったの?」
心配そうな顔をして聞くシヨンにエメは答える事は無かった。
・
行き交う鮮やかな色の服を着た騒がしい人々に、
焼きたてのパンの美味しそうな香り、聞こえてくる音楽。
そんな初めて見る光景にシヨンとフェリは目を輝かせていた。
だがエメは相変わらず警戒しているようで、周りに人がいないか念入りに確かめている。
「すごーい!ねぇねぇ、もっと近くで見たいよ、お姉ちゃん!」
「駄目に決まっているでしょう。これ以上傍に寄ると危ない目にあいますよ。」
「ちぇー...。」
エメはフェリの要望をあっさりと切り捨て、村を睨みつける。
「人間には...近づいては駄目なんです。お父さんたちのような考えになっては駄目...」
その声は静かでありながらも憎しみと恐怖が入り混じっているようだった。
だが、フェリたちはその様子に怯えたものの好奇心は収まることは無かった。
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