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「それさー、Aのこと好きなんじゃん？」
「ハ？」
ざわざわした居酒屋の小さな個室で、向かいの犬顔がアルコールで顔を赤らめて首を傾げる。
あの家を出てしばらくした頃から犬顔は、彼女のことを“A”と呼ぶようになった。
長年名字で呼んでいた癖にどうした、と問えば「同居人がずっとそう呼ぶからつられた」らしい。
あの頃はまだ彼女も犬顔のツレのことを“彼氏さん”と言っていたはずなのに、ここ最近でずいぶん仲良くなったようだ。
確かに、犬顔とツレと、彼女でよく遊ぶという話は何度も聞いている。
「キショいことほざくのやめろや」
「キショかねーだろ。人間の生理現象みてーなもんじゃん」
「うるせー。つか違ェし」
「えー？違くねーだろ」
そんなんじゃない。
幼少期からヒーローになることばかり考えていたので、恋愛経験はろくろく無いが、フィクションの題材としては知識はある。
男と女が付き合って、嫉妬して、別れて、結局また付き合って最後は結婚。山あり谷あり。それでこそドラマ、みたいな。
多分これは、そんなものじゃない。
「Aに対して自分のモンにしたいーとか、キスとかそれ以上のことしたい触りたい、みたいなのねーの？」
「
「ねーの！？え、そしたら俺もう分かんない。でもAが家に居ないのがすげー寂しいって話でしょ？」
「ンなこと言ってねーだろがクソ！！！」
健康な男なので性的な欲求そのものはある。
なんなら彼女相手なら普通に勃つだろう。
ただ自分で処理する気楽さ以上に彼女で発散したいかと言われるとそうではないと思う。
何人の女の中で選べと言われたら間違いなく彼女を選ぶと思うが、絶対に彼女を自分の腕の中に収めたいかと言われると少し違う。
というか正確に言えばそこまでの肉欲をぶつける女は存在しない。
彼女はそんなことしなくていい、と思う。
「え……俺ほんとに下世話な話していい？引くなよ？」
「ンだよ」
「もし、な？そんな話聞いてねーけど、Aに今彼氏がいるとして。
……あいつにベタベタ触るしキスもするし当然抱くし……って男がいるとしたら、どう思う？」
「…………」
少しだけ、脳裏でちらりと想像してしまった自分をブン殴りたくなって、舌打ちで堪えた。
ショックなのか、腹が立ってるのか分からない。
ただその状況では彼女は完全に“元・同居人”でしかなくなっているという事実だけは、この虚しさを助長する。
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小川優(プロフ) - めっちゃ面白かったです!ラブラブしすぎないところがよかったです!!!!!久しぶりにいい作者様に出会えました! (2022年8月9日 7時) (
レス) id: 43275f8478 (このIDを非表示/違反報告)
ふぅ(プロフ) - 「惚れた貼れた」から読ませていただいている者です！いつも素敵なお話をありがとうございます(T_T)かっちゃんと「何か言わずとも分かる」距離感のお話は初めて読んだので、2人を暖かく見守ってるような気持ちでした…♡Part2も楽しみにしてます…！！ (2022年2月23日 9時) (レス) @page31 id: d51b99dca2 (このIDを非表示/違反報告)
えななん(プロフ) - めちゃよかったです！後日談楽しみにしてます！ (2022年2月20日 22時) (レス) @page31 id: 15071f4cc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とろろ | 作成日時：2022年1月28日 1時
