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この2年は、あまりに長かった。
デカい分にはいいだろう、と思っていた家は、寒々しいほどだだっ広く感じた。
帰宅しても家には誰もいない。
冷え切った部屋を暖めるのは自分で操作する暖房だけ。
もとより、味の好みはあれど量と栄養の摂取以外を目的とした食事の質にさしてこだわりは無かったが、一層どうでもよくなった。
自分ひとりのためだけに、時間と手間のかかる料理など億劫すぎる。
月曜日の夜にテレビがついていることもない。
大きなテレビは、自分自身がわざわざリモコンを操作しなければ喋らない。
それが喋るのは、時折録画機能を使うときだけだった。
食後のいいタイミングで用意されるコーヒーもない。
朝は自分でコーヒーを淹れるのは変わらないが。
そういえばあの家で暮らす前は、夕食後に一服する習慣などなかったことに気が付いた。
手持ち無沙汰にパラパラと眺める、よくは知らんが綺麗な画集もこの広いリビングにはない。
装丁も、中身も、素人目にも美しいものだった。
画業に就きたいと思ったきっかけは、実は祖父ではなくこの画家なのだと少し照れながら話していた。
この2年、無いものばかりだった。
しんと静かな夜は、ぽかりと空いた何か＿＿その得体の知れぬ虚無感に頭を掻きむしりたくなった瞬間が何度もある。
家具やトレーニング器具を増やしてスペースを埋めたり、似合いもしない画集を買ってみたりもした。
あれと同じ画集は見つからなかった。
画家の名前も覚えていなかったが、外装や中身、覚えている限りで検索した。結果、モノとしてはネットで判明したが手に入れられなかった。
そういえば貴重なものなのだと言っていた気がする。
あの家で何度も見たイラストやキャラクターがまとめられた冊子が発売されたときは、柄にもなく律儀に予約購入した。
店舗に行くのはさすがに気が引けて、ネット通販を利用した。
それでもこの広すぎる家はどこかひんやりしていた。
静かで、冷たくて、がらんとした広さが虚しかった。
＿＿＿＿まだ2年？
沈黙と虚しさに苛まれて、
吐きそうな孤独に襲われて、
それが無限に続くかのような、
そんな暮らしが始まってから、まだ2年しか経ってねェのかよ。
この2年は、気が狂うかと思うほどに長かった。
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小川優(プロフ) - めっちゃ面白かったです!ラブラブしすぎないところがよかったです!!!!!久しぶりにいい作者様に出会えました! (2022年8月9日 7時) (
レス) id: 43275f8478 (このIDを非表示/違反報告)
ふぅ(プロフ) - 「惚れた貼れた」から読ませていただいている者です！いつも素敵なお話をありがとうございます(T_T)かっちゃんと「何か言わずとも分かる」距離感のお話は初めて読んだので、2人を暖かく見守ってるような気持ちでした…♡Part2も楽しみにしてます…！！ (2022年2月23日 9時) (レス) @page31 id: d51b99dca2 (このIDを非表示/違反報告)
えななん(プロフ) - めちゃよかったです！後日談楽しみにしてます！ (2022年2月20日 22時) (レス) @page31 id: 15071f4cc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とろろ | 作成日時：2022年1月28日 1時
