コリウスの花言葉 (ページ47)

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第六話　誘いページ47

「大丈夫よエミリー。私の親友は、エミリーとセシルだけだから」
「……本当？」
「うん！」
　エミリーはフワリと笑みを浮かべると、私を抱き締め返した。
「A大好き！」
「私も！」
　キャッキャッとしていると、
「ねえ、私のことも忘れないでよ」
とセシルがふてくされたように、私に覆い被さってきた。
「美少女二人に抱きつかれるなんて、私は幸せだな～」
　自分でも気持ち悪いことを言ってみたり。
　いやでも、本当に両手に花だから。思い出してみると、二人はいつだって私を挟む形でいた。一人ニヤニヤしていると、セシルが不思議そうに見つめてくる。
　綺麗な菫(すみれ)色の瞳。
「まあそういうことだから、来週は何があってもチェスをしようね！」
　私が笑顔でそう言うと、二人はコクコクと頷いた。
　そうこうしている内に、予令の鐘が鳴ったので、私たちは慌てて変身術の教室に走っていった。

　〇

「じゃあ、君もスラグ・クラブに行くんだ」
「そうよ」
　最後の授業が終わって、図書館でそれぞれ課題をこなしながら、カノンがそう言った。
「カノンは？」
「残念だけど、誘われてないよ。僕はあまり成績は良くないからね」
「そんなこと無いわ！」
　図書館だということを忘れて、大声を出してしまった。すかさず、司書のマダム・ピンスが飛んできて、私を睨む。慌てて口をつぐむと、マダムは私を睨みながら、本を片付けに奥の方へと行った。
「危なかったね」
「……うん」
　マダム・ピンスに睨まれると怖い。
　この席は図書館の奥にあるから、比較的、普段通りに話しても問題はない。ただし、今回のように、マダム・ピンスがいたら気をつけないといけない。
「それで話を戻すけど……カノンは成績は悪くないわ。前の魔法薬学のレポートも、良い成績だったんでしょ？」
「あれは君のおかげ。僕一人の力じゃない」
　カノンはユルユルと首を振って、否定した。
「でも……」
「兎に角、スラグホーン先生は(・)気がついてないってこと。むしろ、呼ばれなくて安心したよ。スラグ・クラブって、純血の名家が多いらしいから肩身が狭いしね」
　カノンは、片目をつむってクスリと笑った。
　私もつられて笑ってしまう。
「今週末は、私、頑張らないとね」
「？」
「純血の蛇に噛(か)まれないようにしないと」
　冗談めかして言うと、カノンはプッと吹き出した。
「例えば、セルウィンとか？」
　カノンの口から、セルウィンの名前を聞いて驚いた。接点は無かった筈だけど。