第六話 誘い ページ46
「スラグホーン先生は、優秀な生徒を集めたクラブを作っていて、スラグ・クラブって言うのよ。先生は魔法省にお知り合いがたくさんいらっしゃるから、上手くいけば魔法省のコネができるの。それに、名家ともお近づきになれたりね」
つまり、先生に気に入られれば、色々と美味しいことが得られると。
クリスティーナは「じゃあ、頑張ってね」と言って教室を出ていった。
「スラグ・クラブに捕まったわね」
「あ〜あ。せっかく週末にAとチェスをしようって計画してたのに」
いつの間にか、セシルとエミリーが横に立っていて、私は飛び上がりそうになった。
残念そうに肩を下げるエミリーに、申し訳なくなる。
「今からでも断ってこようか？」
「いいえ。無理よ。あの人は優秀な生徒は絶対逃がさないもの。断っても、次回を狙ってくるから、チェスはまた今度ね」
私は、別にちゃんと断れば良いのでは、と思ったが二人が頷かなかったので、来週にチェスをしようと約束した。
「それよりAは、いつの間にか友だちを増やすのが得意よね〜」
教室を出て、変身術のクラスに向かいながら、エミリーがそうぼやいた。
私は、よくわからないので、首を傾げてしまう。
「そう？」
「レイブンクローのトワイライトでしょー、グリフィンドールのマルシェでしょー。あ！ あと最近は、マルシベールとかエイブリーとも話してるでしょ」
「まあ確かに……」
入学当初と比べたら、話す人が増えている気がする。
でも、マルシベールやエイブリーとは課題についてしか話さないし、クリスティーナは今日初めて話したのだ。友だちとはまだ言えないと思う。
そのことを伝えると、エミリーは「わかってない」と唇を尖らせて、そっぽを向いた。
助けを求めるようにセシルを見ると、苦笑を返された。そして、セシルはエミリーをチラリと見ながら、
「あのね。エミリーは寂しいのよ。Aがどんどん友だちを増やして、私たちに構ってくれなくなるかもって思ってるの」
私は目を丸くして、エミリーの方を向いた。エミリーは窓の外を見ているが、その耳は赤い。
私は嬉しくて、エミリーに抱きついた。
エミリーはびっくりして、目を見開いている。
ああ、綺麗だな。
私の頭にそんな思いがポツンと浮かんだ。そして、この榛に映ることが許されていることに、また嬉しさがこみ上げる。
私はニッコリと笑って、エミリーの両頬を包み込んだ。
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2020年2月24日 16時
