第六話 誘い ページ45
「マルシェ、最初は反時計回りにかき混ぜないと」
「あ、ありがとう」
正しい手順で彼女が大鍋をかき混ぜるのを見て、私はホッと息をついた。
危ない、危ない。間違えたら、爆発して私たちがいぼだらけになっちゃうところだった。
「あ、あの……」
「ん？」
マルシェは、大鍋を見ながらモジモジとしていたが、意を決したように口を開いた。
「良かったら、クリスティーナって呼んで。あまり、名字で呼ばれたくなくて……」
どこかで聞いたような台詞だな、と思いながら私は頷いた。
「じゃあクリスティーナ。私のことも名前で呼んで」
「ええ。……あーと、次はどうするの？ A」
どうやら、クリスティーナは魔法薬学が苦手のようだ。
私は、教科書も交えながら、彼女に丁寧に作業の手順を説明していった。
私とクリスティーナが作ったいぼ生え薬は、その日の優秀作になった。
「素晴らしい！ スリザリンとグリフィンドールにそれぞれ十点与えます」
スラグホーン先生が絶賛してくれて、私は鼻高々だった。魔法薬学が苦手そうなクリスティーナも、自信がついたみたいで良かった。
「ありがとうA。その……良かったらまた組まない？」
「ええ。機会があったらね。あんまりあなたに構うと、彼氏が怒りそうだから」
入り口で、さっき私に突っかかってきた男子生徒がこちらを睨んでいる。
「別にケイトは彼氏じゃないわ。幼馴染だからって、過保護なのよ。うざったいから、やめてって言ってるのに」
ため息をつきながら、幼馴染の文句を言うクリスティーナ。
「まあ良いんじゃない？ 大切にされてるってことで」
「ぜっぜん良くない！」
ムーッとブスくれるクリスティーナ。何この可愛い生き物。
彼女の頬をムニムニとしていると、スラグホーン先生がやって来た。
「ミス・A、ちょうど良かった。今週末、空いているかい？」
「え？ 空いてますけど」
「それなら良かった。今週末、私の部屋でパーティーを開こうと思っていてね。ミス・Aにはぜひ来て欲しかったんだ。いやはや、前のレポートは素晴らしかったよ。効能だけでなく危険性もまとめるとは、君は天才だ！」
「はあ……」
「それじゃあ、週末に」
先生はそう言い置いて、太った体を揺すりながら立ち去っていった。
横で、クリスティーナがため息をつく。
「良いわね。上手くいったら、コネができるんでしょ？」
言っている意味がわからず、
「どういうこと？」
と尋ねた。クリスティーナは、私を羨ましげに見ながら、
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2020年2月24日 16時
