第六話 誘い ページ44
「私、A・A。よろしく」
「……わ、私はクリスティーナ・マルシェ。よ、よろしく」
簡単な自己紹介を終え、彼女の隣に座ると、すかさずグリフィンドールの男子生徒が突っかかってきた。
「おい。何もしないだろうな？」
「何をするのよ……」
「お前はスリザリンだ。スリザリンは、卑劣で鬼畜な奴らが多い。クリスティーナに何かしないとは言えないだろ。狡猾な蛇め！」
決めつけるような言葉に、私はムッとした。
「失礼ね。スリザリンの全員が、卑劣で鬼畜とは限らないわよ。あなたは、よく知りもしないでスリザリンのことを決めつけるのね。私がグリフィンドールに何かしたのを見たことでもあるの？ むしろ逆だわ。散々、大変な目に逢わされたんだから」
私の強い口調に、相手の男子生徒は一瞬怯んだが、すぐに言い返してきた。
「それでも、仕返ししないとは限らないだろ？」
「しないわよ。仕返ししたら、私に嫌がらせをしてきた子と同じレベルになっちゃうじゃない」
私のこの言葉に反応して、数人のグリフィンドールの女子生徒が睨んできた。
「ケイト！ いい加減にして！」
突然、隣から割り込んできた声に、私は驚いた。
私の隣に座っている女の子―――マルシェが男子生徒を睨み付けている。
「私が誰と組もうと、あんたには関係ないわ。これ以上、余計なことを言ったら、コウモリ鼻糞の呪いをかけてやるから！」
マルシェがきつく脅すと、男子生徒は不満げに席についた。
「……それではみんな、作業を始めて」
先生の一声で、何事も無かったかのように、生徒たちは作業を始めた。
「ケイトがごめんね」
「別にいいわよ。私の方こそごめん。スリザリンなんて嫌よね」
材料に目を落としながら、私は苦笑を浮かべる。庇ってくれたけど、内心は嫌に違いない。
スリザリンが嫌われていることは、ホグワーツで暮らしている以上、感じざるおえなかった。
しかし、マルシェは慌てて首を振った。
「ううん。そんなことないわ！ 私、嬉しかったの。寮関係無く話しかけてもらえて。私にはそんな勇気ないから……」
自信無さそうに視線を下げるマルシェ。私は、ニヤリと口角を上げると、
「そんなことないでしょ。さっき、コウモリ鼻糞の呪いをかけると脅したグリフィンドール生は、誰だったかしら？」
マルシェはパチパチと
「あっははは。確かにそうね」
お互い、クスクスと笑いながら作業を進めていたが、マルシェの手元を見て私は慌てて、
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2020年2月24日 16時
