第六話 誘い ページ41
トムと仲直りをしたおかげで、クリスマス休暇は素晴らしいものになった。
家に帰ると、両親にこの数ヵ月のことを話した。セシルとエミリーという親友ができたこと。カノンとも友だちになったこと。毎日の授業のことなど、異国の学校で順調に生活していることを聞いて、両親は安心しているようだった。
休暇が終わり、ホグワーツに戻るときに、お父さんに「絶対彼氏は作るな！」と命じられた。
私は美人じゃないんだから、そもそもモテないのに。何を言っているんだか。
ホグワーツに戻ると、また平凡な日常を送った。今までの嫌がらせを仕掛けられる毎日が無くなったおかげで、私は徐々に成績を伸ばし、一週間で稼いだ得点はトムと並ぶくらいだった。
授業を受け、放課後は親友たちと話し、時に課題を手伝う。そんな風に毎日は流れていった。
その日も私は図書館に来ていた。
日本にいた頃から、私は図書館が好きだったけれど、ホグワーツのは日本のとは広さも蔵書数も全然違う。
天井まで届きそうな書棚には、何千、いや何万もの蔵書が修められている。一生分の時間をかけても読みきれないほどの本があった。
私は、その中から一冊選んで読むようにしていた。マルシベールに送ったお礼のメッセージに込めた呪文は、この図書館で見つけた呪文集に載っていたものだ。綺麗な魔法だったから、一度使ってみたいと思っていた。マルシベールも喜んでくれたみたいだし、見つけて良かった。
さて、最近私は『ホグワーツの歴史』を読むことにはまっている。
借りることもできるが、
今日も、書棚から抜き取り、目当ての場所に持っていった。
図書館のずーっと奥にある、西向きの窓がある場所に座って、午後の心地よい日差しを浴びながら、読書をしていた。
周りは静かで、私がページをめくる音しかしない。
「あれ、A？」
突然降ってきた声に、私は椅子の中で飛び上がった。
「カノン！」
顔を上げると、カノンが立っていて、私の様子にクスクスと笑っている。
カノンとは、いつかの薬草学の補習以来、廊下ですれ違えば挨拶こそすれど、なかなか話ができていなかった。
カノンは前より声が低くなっている。声変わりが終わったのだろう。そういえば、トムたちもいつの間にか、声変わりをしていた。
声は低くなったけど、カノンは相変わらず異性とは思えない、美しい容姿だ。彼の金髪が、太陽の光を浴びて、キラキラと輝いている。
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2020年2月24日 16時
