コリウスの花言葉 (ページ39)

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第五話　仲直りの宴ページ39

トムはため息をついて、
「あいつらといるのは楽しいけど、時々疲れる……」
とぼやいた。
　確かに、マルシベールとエイブリーは癖が強そうだ。
　その時、屋敷僕妖精たちが「お飲み物もどうぞ！」とカボチャジュースを持ってきてくれた。
「僕らの仲直りを祝って」
「ふふ。ええ、私たちの仲直りを祝って」
「「乾杯」」
　コツンとゴブレットをぶつけて、カボチャジュースを飲んだ。
　それからは、軽食を食べながら授業やクリスマス休暇の過ごし方について話した。
　久しぶりにトムと話したことが、泣きたいくらい嬉しかった。
　二人だけの宴はとても楽しくて、私たちはいつまでも話し続けた。
　軽食を食べ終わると、私は屋敷僕妖精たちに紙と羽ペンを用意するように頼んだ。
　すぐに用意されたそれらで、トムとあるものを作り、私たちは厨房を後にした。
　寮に戻ると、トムに作ったモノをマルシベールに渡すよう頼んで、私たちはそれぞれの部屋に戻った。
　私は、マルシベールがどんな反応をするのか、楽しみで仕方がなかった。

　〇

　部屋に入ってきたトムから渡されたモノを見つめて、マルシベールは首を傾げた。
「何これ？」
　顔を上げて、こちらを見下ろすトムに尋ねてみたが「いいから開けろ」と冷たく返された。
　手の中には、鳥形に折られた一枚の紙。
　恐る恐る開くと、フワリと光が溢れて、マルシベールの周りを飛び交ったあと、目の前に文字を浮かび上がらせた。
『ありがとう』
　その文字を見て、マルシベールはフッと笑みを浮かべた。
「じゃあ、無事に彼女と仲直りできたんだ？」
「ああ。お前には世話になったから、後日、ちゃんと礼を言いたいって」
「あー、いいよいいよ。これで充分。こんな綺麗な魔法を見せられちゃね」
　これで満足しなかったら、目の前に立つトムに怒られそうだ。
　マルシベールはそっと紙を折り畳むと、大切に手帳に綴(と)じた。
「これ、リドルと彼女で作ったの？」
「そうだ。Aが図書館で見つけた呪文集にあった魔法を込めてみた」
「さっきの光の演出ね。凄いな。彼女は」
「当たり前だろ。彼女はそこら辺の純血の奴らより、優秀だ」
「確かに……」
　マルシベールは苦笑を浮かべながら、頷いた。
　それは認めざるおえない。恐らくAはマグル生まれだろうが、純血のマルシベールも一目置く実力の持ち主だ。本人は、自覚していないだろうけど。
　自分のベッドで寝る仕度を始めたトムを見つめながら、マルシベールは笑みを修めた。