第五話 仲直りの宴 ページ38
階段を降りきった先には、一枚の絵画が飾られていた。果物がたくさん盛られた絵だ。
絵画の前で首を傾げていると、追い付いたトムが「見ていて」と言って、描かれている梨を
「どこに繋がってるの？」
「降りてからのお楽しみ」
トムはニヤリと笑うと、階段を降りていった。私も後に続く。
階段の先には、明かりが漏れていて、近づくにつれて賑やかな喋り声も聞こえてきた。
降りた先の光景に私は口を大きく開けた。
そこは厨房で、たくさんの不思議な生き物が
「彼らは誰？」
「屋敷
屋敷僕妖精が私たちに気づき、「何かご用ですか？」とキーキー声で尋ねてきた。
「何か、軽食はない？」
トムの一言で、厨房のテーブルの上には、ホットサンドや果物、スコーンなどが用意された。単品だと軽食だが、こうもたくさんあると、もはや一食分だと言える。
屋敷僕妖精は働くことが何よりの生き甲斐らしく、私にも何かないか尋ねてきた。
「ごめんね。私は彼についてきただけだから」
と言うと、彼らは少し落ち込んでいたが、「何かご用がありましたら、何なりとお申し付けください！」とキーキー声で言った。
彼らが仕事に戻ると、トムは「さあ食べようか」と席についた。
「え？ 寮に持っていかなくて良いの？」
「別に大丈夫だよ。そもそも軽食を持ってこいって言うのは、マルシベールが僕らを仲直りさせるための作戦だろ？」
「知ってたの？」
「ああ。談話室を出る前、小声で『ちゃんと仲直りしろ』って言われたよ」
「そうだったのね」
トムを厨房に向かわせたのは、私たちを仲直りさせるための、マルシベールの作戦だった。もしかしたら、チェスの勝負から、作戦は動いていたのかもしれない。
「彼には、お礼を言わないとね」
「良いと思うけど、あまり持ち上げると、あいつは付け上がるから」
「そうなの？」
「ああ。前にレポートを手伝ってもらった時、お礼を言ったら『もっと感謝してもいいんだよ』って言ってきたんだ。エイブリーはエイブリーで、聞いてるのかわからない反応するし……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 16人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2020年2月24日 16時
