第五話 仲直りの宴 ページ35
ここまで来ると、怒りより
今、私は可哀想な人を見る目をしているのだろう。期待したような反応ではなかったのか、グリフィンドールの女の子は顔を真っ赤にさせて震えている。
その様子に、自然と口元に笑みが浮かんだ。
「どうしたの？ A」
「ん〜？ 何でもない」
セシルが不思議そうに尋ねてきたけど、私はグリフィンドールの方から顔を背けた。もう興味は無い。あんな連中に付き合うのは時間の無駄だ。
「君たちはクリスマス休暇はどう過ごすの？」
「それ、あなたに関係ある？」
「気になっただけ」
マルシベールは、私の視線の先に気がついていたようだけど、すぐに別の話題を振った。
それに対しエミリーがつっけんどんに対応する。私は端的に返すだけにした。
「私は日本に帰るわ」
「そうなんだ。僕は残るよ。リドルも居るしね」
マルシベールは横に立っているトムを見やったが、トムは私と目を合わせてくれなかった。
「もう行こう。エイブリーの課題の件もあるし」
トムは会話を強制的に終わらせると、マルシベールとエイブリーを引きずって行ってしまった。
私が去り際のトムの背中を眺めていると、マルシベールと目が合った。彼が何かを察したように、私とトムのことを交互に見たので、私は慌てて視線を逸らした。
そうして迎えたクリスマス休暇前日。帰省組は、明日の朝一番にホグワーツを発つことになっている。
帰省の準備を済ませた私は、しばらく会えないセシルやエミリーとの時間を談話室で過ごしていた。
私の視界の正面では、トムやマルシベール、エイブリーたち同級の男子生徒がチェスをしていた。
結局トムとは仲直りできなかったなと人知れず落胆していると、男の子たちがワッと一斉に声を上げた。
「はい、僕の勝ちー」
マルシベールが立ち上がってトムを見下ろしている。私からはトムの背中しか見えなかったが、彼は悔しそうに頭を抱えていた。
「なあリドル。何か軽食を持ってきてよ」
マルシベールはわざとらしいほどの大声で、負けたトムにペナルティを課した。対するトムは、至極面倒くさそうにしながらも腰を上げ、談話室から出ていった。
夕食を食べたばかりなのに、男の子はすぐにお腹が空くものなのかな。それに、いったいどこで食べ物が貰えるのだろう。
不思議に思いながら出ていくトムを眺めていたが、ふと視線を戻すと、マルシベールとしっかり目が合い驚いた。
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2020年2月24日 16時
