第五話 仲直りの宴 ページ34
遠慮がちに言う私を綺麗に無視して、セシルは説教を続ける。
「兎に角、課題を集める係の私が迷惑するから、今日中に提出して。良いわね？」
「あ〜、わかったよ。今日中ね」
「約束よ？」
「はいはい」
「まったく……」
適当な態度のエイブリーに呆れたように、セシルはため息をついた。「これだから、年下じゃない男は困る」とぶつくさ文句を言っている。その様子に、苦笑いしかできない。
「それより、ミス・Aは魔法史が好きって言った？ 珍しいな。あの教科は嫌いな奴が大半なのに」
黙ってやり取りを見ていたマルシベールが、感心したように私を見てきた。
「そうなの？ とても面白いじゃない。それに、私は元々歴史とかそういうものが好きなの」
「へえ。僕は嫌いだ。教科書を見るのも吐き気がするね」
マルシベールは不快そうに顔をしかめた。
その時初めて、マルシベールもエイブリーも整った容姿をしていることに気がついた。今まで、遠目に見るかしかしてなかったから当たり前だが。
マルシベールは、美しい銀髪に
対してエイブリーは、茶髪に茶色の瞳の少年。いつもつるんでいる三人の中では一番背が高く、スタイルはモデル並みだ。気怠げで眠そうだけど、真剣な時のギャップが良いと、女の子たちが噂していたのを聞いたことがある。
二人ともトムやカノンには負けるが、結構イケメンなのだ。トムとカノンが整いすぎているだけ。
その時、はたと私は気がついた。
両隣に美少女のセシルとエミリー、向かいには美少年が三人。今、美形五人に囲まれてる？
私は気づかれないようにため息をついた。
みんな、白い肌と整った容姿を持っているのに、私は色白だけど黄色がかった肌に黒髪黒目、鼻は低くて童顔。美形だったらまだ良かったけれど、私は普通の容姿だ。五人に囲まれているこの状況は、ある意味目立っているのかもしれない。ただでさえ、ホグワーツでは唯一の東洋人とあって、入学以来注目を集めているのに。
今だって、ハッフルパフの女の子が私を見てクスクス笑っている。
表立った嫌がらせや中傷は無くなったけど、裏ではまだ、私に対する差別は残っているのだ。
ああほら、今まさにグリフィンドールの女の子が向こう側で声には出さずに、『引っ込んでなさい、イエロー』ですって。
面と向かって言うと制裁が怖いから、あんな風に言うしかないのね。
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2020年2月24日 16時
