1話 私の太陽 ページ2
煙臭い。火事ほどの臭さではないが、鼻に突く噎せそうなほどの煙の匂いが、鼻腔を擽る。思い瞼をあげてみると、最初に目についたのは、何時もの寝場所のお台所の、雨が降れば屋根の茅から雫が伝って、鼻の頭に落ちる、古い茅葺き屋根ではなく。高級感漂う、どこまでも白いようなしっかりした屋根だった。
ぼけ、と焦点がいまいち定まらない目で、壁を見つめる。軈て、ゆっくりと昨日のことを思い出す。そうだ、死のうとしたんだっけ。
ここはどこだろう、と辺りを見回す。部屋の中には、私が寝ているベッドと、電気スタンドが置いてある机のみ。先程の匂いは、ここの部屋が発生源ではないらしい。
つまらない、どこかに隠し扉とかないかな、なんて天性のふざけ心を発動させて、壁を慎重に、あまりべたべたせずに押す。この壁が、私の付けた指紋によって汚れてしまったら勿体無いから。
壁を押し初めて数10秒、自分のふざけたい、という何とも幼稚な願望が恥ずかしくなったとき、偶然凭れかかった壁がキイ、と音を出して倒れる。そのままの姿勢を留めておくなんて難しいこと、できるはずもなく、私は倒れた壁と共に、背中から倒れた。
ダン、と渇いた音が鳴り響いたとともに感じる痛みと違和感。執拗に、痛みはじわじわと私を攻撃する。
なんてことだ、悪態をついたとき、あの煙臭い匂いが鼻を猛攻。匂いの元を探そうと辺りを見回したとき、目に綺麗な橙が映った。
――――あれは、昨日の夜に見た、一瞬だけの私の太陽。
「あ、あの! ここって」
彼は私に言い終わらせてはくれず、口から出損なった言葉が、私の口から、ちょぼちょぼと情けなく落ちる。
力のこもった掌で、男の子は私の肩を掴んだ。
「お前、よく死ななかったな! 寝起き早々悪いんだけど、ちょっと掃除を手伝え!」
有無を言わさぬ物言い。その口調に、私の心は皺だらけの萎んだ風船みたいに、無様に成り果てる。はい、と呟くように言った瞬間、私の両手には箒と塵取りが掴まされていた。
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ましら(プロフ) - fruitさん» 返信遅れてごめんね!そう言ってくれて凄い嬉しい!読みにくいし作品はバンバン消すわの私の作品を追いかけてくれるなんて、凄い嬉しいよ。fruitちゃんの優しいところ凄い好き。コメントありがとう! (2017年9月16日 21時) (レス) id: 512c5a6245 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - おおー!またもや面白そうな作品で・・・!この作品も追いかけさせていただきます(^。^)更新頑張ってね!! (2017年7月26日 21時) (レス) id: e09a409b3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましら | 作成日時:2017年1月30日 16時