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質問の答えは返って来なかった。それ所か、耳を疑う様な言葉が飛んで来て、慌てて頭の中で文字の輪郭をなぞるみたいに繰り返す。
『 俺が居るから、飲み、来ないの 』って……？
聞かれてる内容は勿論、理解は出来るけど。どうして佐久間くんがそんな事を言うのか、そんな事を聞いて来たのか、全く理解出来なくて。
鏡を見なくても分かる。きっと今私は、とてつもなく間抜けな顔をしている。混乱で何も返せないで居ると、くっと眉を下げた佐久間くんが目を伏せた。ピタリと合っていた視線が、また簡単にズレて仕舞う。
「 ……去年からさ、なんとなく思ってて 」
「 … 」
「 でも一年の時は、未成年だから其処ら辺ちゃんと守ってんのかなって思ってた。久世さん、真面目な人ってイメージ、有ったし。けど二年なってもあんま変わんなくて、ん？って思ってたタイミングで、何回か俺が用事で行けなかった会に居たって聞いて…… 」
私の前でこんなに沢山喋る佐久間くん、初めて見た。衝撃過ぎて、折角の私に向けられた言葉達が記号みたいになって右から左へ流れて行く。
これまた初めて見る彼の、まるでこの世の終わりでも悟ったかの様な表情だけ、目の奥に焼き付いた。
「 ……ごめん。ひとつ、嘘吐いた 」
「 へ 」
「 バイト先をね、教えてくれたの。宮っちが 」
「 ……宮ちゃん、が？ 」
「 ふっかにも、しょーたにも。気になる事は本人に直接聞いて来いよって、追い出されちゃって 」
「 え、 」
「 だから……ここにいるのは、偶然じゃなくて 」
久世さんに聞きたくて、会いに来たの。
目を伏せた侭へらりと表情を崩して、少し震えた小さな声で、でも優しい口調で、そう言うから。
……もしかしたら。いやもしかしなくても、私はずっと大きな勘違いをしてたんじゃないかって、思えて。数年抱え続けていた、彼に確かめたかった事を、やっと吐き出せた。
「 佐久間くんって、私の事、嫌いだよね？ 」
数秒程訪れた沈黙の後、これ迄に聞いた事の無い大きな声と全身でこれ以上無いぐらいに驚きを表現してくれた佐久間くんを見て、なんだ、こんな簡単な話だったのかと、気が抜けた。ずっと、心の何処かに引っ掛かっていた物が無くなった、そんな感覚がした。
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作者名：瀞 | 作成日時：2024年2月28日 0時
