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心臓が飛び出る様な驚きは、多分、ギリギリ声になってなかったと思う。理解が追い付くよりもずっと先に、私の右腕を掴んでいた手が左肩に回る。ぐいと引き寄せられて、視線の先で、直ぐ側で揺れるピンク色。
も〜、コンビニで待っててって言ったじゃん。
固まる私を他所に、彼は当然の様に笑みを浮かべながら知らない約束を口にする。思考も停止してしまっている私は返事も出来ずに、彼の顔に有る特徴的な黒子を見つめていた。
「 んで、この人達はー？知り合い？ 」
「 ぇ、あ……いや 」
「 違うの？ 」
問い掛けに頷くと、ほーんって呟いた彼はニコニコと笑った侭で、でもさっきよりずっと真剣な声で言葉を放つ。
「 おにーさん達ごめんね？この子、俺のだから 」
何処かで、ドッと大きな音がした、気がした。偶に通る車の音以外は基本的に静かな場所で、一体何の音だろうと、回らない頭で思う。
前を塞いでいた男の人達は、道聞いただけっすよ、なんて吐き捨てて、コンビニへ戻って行く。行こ、って耳元で声がして、其処でやっと身体が動いた。少し歩いてコンビニが見えなくなった所で、フッと無くなった肩の重み。
「 ……、大丈夫？ 」
「 、うん 」
「 何も、されてない？ 」
「 ……何も 」
「 そっか 」
数分前とはまるで違う雰囲気で、困った様に視線を落としてポツポツと言葉を零す彼は、何時もの、
「 佐久間くん 」
「 ん、 」
「 えっと……とりあえず、有難う。困ってたから、助かった 」
「 ……良かった 」
偶々通り掛かったら、
どの疑問から解消したら良いのか、難しい。
「 ……同期飲み、終わったの？ 」
「 え？ 」
「 ほら、今日。ふっかの家で飲みだったよね？ 」
当たり障りの無い話題から選んだつもりだったけど、何故か俯いていた佐久間くんが顔を上げた。あ、と思った。呼吸が止まる様な感覚がして、世界がスローモーションに見えた。
鈴を張ったような目がこれ以上無い程に大きく見開かれて、数年振りに視線が交わる。その瞬間、気付いてしまった。
あの、正体不明の大きな音は、私の中で鳴っていた音だと。
「 久世さん 」
「 っはい、 」
「 ……俺が居るから、飲み、来ないの？ 」
「 ……、え？ 」
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作者名：瀞 | 作成日時：2024年2月28日 0時
