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夜遅くなる帰り道はイヤホンをつけて歩かない、なるべく街灯と人通りが多い明るい道を通る。そんな、少々心配性が過ぎるお母さんみたいな阿部ちゃんからの言い付けを守って、バイトから帰る。
反対方向じゃなかったら送りたいんだけど……なんて、ラストで被る度に困った様な顔をするから、ちゃんと言われた事守るから大丈夫だよ、って彼を安心させる為の約束になった。
まぁ正直、こんな平々凡々なチンチクリンを狙う馬鹿は居ないでしょって感じだけど。
容姿の整った宮ちゃんからは変な人達に絡まれて困った話を聞いたり、実際に彼女が声を掛けられてガン無視してる所を見たりした。有難い事に、私はそんな経験が一度も無い。
美人には美人の苦労が有るんだなと思ったし、自分に関しては、自己評価と他己評価が釣り合ってるなとだけ思った。
( 帰ったら何食べよ…家の冷蔵庫何が有ったっけ、 )
どうせ誰も見てないからと大きく口を開けて欠伸をしながら、夕飯についてボーッと考える帰り道。何時ものコンビニの前を通り過ぎた所で、すいませ〜ん、と後ろから声を掛けられた。私が振り向くより先に、前に回り込んで来た男の人達に少し吃驚しつつ、見せられたスマホの画面に視線をやる。
「 ここって、どうやって行くか分かります？ 」
「 ……あー、駅の近くですね。この道真っ直ぐ行ったら着きますよ 」
「 この道真っ直ぐっすか！なるほどなるほど 」
道を聞かれてるだけなのに、何だこの、嫌な雰囲気。相手側の謎に高いテンションの所為？連れの人と時折目を合わせて、ニヤニヤしてるから？……いや、そもそもスマホでマップ調べたら分かる時代、人に道尋ねる事有る？
其処まで考えて、あ、もしかしてって思った。
「 辿り着けるか不安なんで〜、おねーさん案内してくれません？ 」
これが宮ちゃんの言ってた所謂変な人達か、と。ついさっき絡まれた事無いって自負した所だったのに、自分でフラグ立てて回収しちゃった。馬鹿なのか、目が節穴なのか、全然女の人が通らなくてもうコイツで良いかってなったのか、どれだろう。
どうしよう。普通にお断りしたら諦めてくれるのかな。かと言って正面突破したとして、一対一ならまだしも、三対一じゃ逃げ切れるかどうか微妙だもんな。
立ち止まった時点で運の尽きだったかと思いつつも口を開こうとしたら、突然、誰かに右腕を掴まれて。
「 ごめん！迎え遅くなった！ 」
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作者名：瀞 | 作成日時：2024年2月28日 0時
