０３ ページ3
.
阿部ちゃんがくれた言葉は予想外で、文字通り受け取りはしたんだけど、意味はよく分からなかった。どう言う事？って作業を中断して阿部ちゃんの顔を見たら、その侭だよって笑った彼に、手は止めないのって注意された。
「 もうちょっと、分かり易く 」
「 サークルを辞めて、関わりを絶って、それで解決っていう方法にそもそも納得出来てないんじゃないかって事 」
「 ……ほう 」
「 前から聞いててちょっと思ってたんだけど、Aはその人の事どう思ってるの？ 」
「 え 」
……佐久間くんの事を、どう思ってるか。
聞かれて初めて、考えた事も無かったな、と思った。佐久間くんが、きっと私を嫌いだろうから。私と関わりたくないだろうから。だから、避けなきゃいけない。関わりを絶たなきゃいけない。ずっと、そう思って来た。
「 分かんない、や 」
けどそれって、この考え方って、私の気持ちが何処にも無い。と言うか、考える事の無いように、蓋をしていた。相手の負の感情が自分よりも強い時は、それが優先されるべきだと思っているから。
「 俺は、Aの人の気持ちを汲み取った上で行動する所、尊敬してるよ 」
「 … 」
「 でも、全部が全部それで正解かって言うと、多分そうじゃない時も有るよね？ 」
「 そうだね 」
「 ね。偶にはさ、主語を自分にして考える事も大事なんじゃないかな 」
「 ……阿部ちゃんって、やっぱ怖いね 」
「 えぇ？何急に笑 」
「 ウソ、凄いね 」
何時も、私に無かった視点を、私が言語化出来なかったモヤモヤを、優しくて正しい言葉遣いで伝えて呉れる。普通に喋ってても頭の良さが垣間見えるんだよね、阿部ちゃんは。私の方がずっと、尊敬してるよ。
「 ちょっと、スッキリしたかも 」
「 ほんと？良かった 」
「 いつもありがと、 」
「 ふふ、そんな大した事してないよ 」
早く仕事終わらせて帰ろ？って余りにもナチュラルに首を傾げられるから、あざといってツッコミ入れるの忘れる所だった、危ない。そんな私に阿部ちゃんは、何時も通りちょっと不服そうな顔で笑った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 416人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瀞 | 作成日時：2024年2月28日 0時
