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「 いや、でも不可抗力だったし 」
「 ん、何が？ 」
閉店間際の人が居なくなったカフェの中、レジ締めを進めながら頭の中を巡っていた言葉はいつの間にか声になっていたらしく、食器を片付けていた阿部ちゃんが振り向いた。
「 なんでもない。ボーッとしてた 」
「 そう？締め作業間違えないでね 」
「 分かってる、早く上がりたいし 」
夜までやってる、個人経営のカフェ。飲食がしたいけどチェーンは辞めといた方が良いと聞いて、選んだバイト先。そこそこ時給良いし、店長も同僚も優しいし、ラストで入っても22時半ぐらいまでには帰れるから、我ながら良い所を選んだなと思ってる。
阿部ちゃんは、バ先で唯一のタメ。大学は違うんだけど、シフトがよく被るから直ぐに仲良くなった。
「 そう言えば 」
「 ん？ 」
「 結局、サークル辞めたの？ 」
「 ……辞めてない 」
「 うん。そうかなぁとは思ってた 」
さっきの呟きもそれ関連？って相変わらず鋭い彼に、少しの恐怖と戸惑いから、まぁ、と歯切れの悪い返事をしてしまった。
そう、不可抗力だった。
入りたいのは大学生って感じの緩いサークルで、でもヤバイ噂の無い所。そうやって探してたら、同じ学科の先輩から声を掛けられて、連れられた新歓の飲みの場に宮ちゃんが居て。一緒に入ろうよって彼女の誘いに、断る理由も無かったので乗ってみたら、入った後で佐久間くんも居る事を知ったんだ。
「 飲み会の参加、なるべく被らないようにしてるんだっけ 」
「 うん。少人数の時は特に 」
「 気使うの面倒だから辞めたいんじゃなかったの？ 」
「 そう、なんだよね 」
全体での飲みであれば人が多いから、同じ卓で飲むのを避ければ良い。でも、今日みたいな同期飲みとかは人が減る分、自然に避けるってのが難しくなる。今日は偶々シフトが入ってたけど、過去には予定が有ると嘘を吐いた事も。
「 罪悪感有るから、出来るだけそう言うのしたくないけど 」
「 うん 」
「 なんか、ね。そもそも私、辞めるって言うの、苦手だし 」
動く手はテキパキとしつつも、口から出て行く言葉達は何処か釈然としなくて、だらしない。少し間を置いて小さく唸った阿部ちゃんが、食器を片付け終わったのか隣に来た。
「 これは、あくまで俺の見解なんだけど 」
「 お 」
「 違うんじゃない？ 」
「 何が？ 」
「 Aが本当に採りたいと思ってる、解決方法が 」
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作者名：瀞 | 作成日時：2024年2月28日 0時
