貴方の綴れに生命の音を (ページ6)

今日:9 hit、昨日:14 hit、合計:56,785 hit

【2】5 ページ6

(和也side)

丈「和也！帰るぞ！」

チャリ小屋でもたついていれば

早くしろと向こうから怒鳴る声。

和也「ちょぉ待ってって！すぐ行く！笑」

カバンを前カゴに放り込んで

ハンドルを両手で持つと、

俺は丈くんまでの短い道のりを

自転車を押して走った。

和也「丈くん早い、せっかち良くないで？」

丈「俺が早いんやなくて、お前が遅すぎんねん。

ほら、もっとはよ歩け。」

和也「うわ〜、つめた笑」

丈「うるさい。」

・

高校1年生、夏。

2個上の丈くんはもうすぐ部活も引退で、

進路もそれなりに決まる時期。

夕方でも蒸し暑く

俺の制服のシャツの下は、少しの汗で気持ち悪い。

丈くんのユニフォームも

この夏で見納めか……。

・

和也「なんか寂しいなぁ。笑」

丈「なんで？笑」

和也「やって、こうやって2人で帰るんも

もうすぐ終わりやろ？」

今まではお互い部活があったから。

やから帰る時間も一緒やったけど。

もう下校時間も一緒やなくなる。

また、丈くんが1歩先。

和也「そや、丈くん進路決まったん？」

丈「一応。大学は行かんで、高卒試験受けるわ。」

和也「そっか。」

和也「てか丈くん…卒業したら、家は？」

丈「寮やろうな。」

和也「やっぱり…また、離れなあかんのかぁ」

俺はここに置いてけぼり。

丈くんは、いつも俺より先に旅立ってしまう。

・

お互い家が同じ地区で、

小さい頃からいつも同じ公園で遊んでいた丈くん。

幼稚園は一緒に通ったし、

小学校も同じ登校班やった。

中学生になって、

被った1年間だけ一緒に通って。

なんでも、先に行ってしまう丈くんが辛かった。

どうしても離れたくなくて。

丈くんの中学の卒業式で、
号泣しながら告白したんよ。笑

それからは2年間の遠距離(？)恋愛。

高校はそんな丈くんを追いかけて。

丈くんの居る、
たった1年を求めてこの学校に入学した。

俺はΩ、丈くんはα。

俺が高校卒業したら噛んでもらう約束までしてる。

婚約者、みたいな…笑

・