貴方の綴れに生命の音を (ページ45)

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(流星side)

丈さんが俺たちの前に姿を現したのは、

和也くんが亡くなった4日後。

ちょうど忌引休暇の中日の頃だった。

警察署内の廊下をひとり歩く丈さんは

遠目でも丈さんでは無い気がして。

少しの不安と、

あと、ちょっとした触れ難さを感じた。

きっともう用事は済んだのだろう。

ゆっくりと丈さんが去って行く。

そしてそれを見ていた俺には

逃げるとかいう選択肢は無く、

意を決して、

虚無の背中を追いかけた。

流星「丈さん…、、！」

いつもピンと張っていた背広は

シワがつき、よれて、

丈「…、、。、」

それを纏った先輩も、

くたびれて、頼りなくて

指先ひとつで

簡単に崩れてしまいそうだった。

流星「…、丈さん、。」

この先の言葉は

何も無い。

この人を今この瞬間

ここに繋ぎ止められただけで

俺は満足してしまっていた。

丈「……、、よぉ…」

想定外に見えた顔面は、

徹夜明けの死にかけよりも酷い。

不謹慎にも最早、死んだような顔だった。

流星「もう、帰っちゃうんですか。」

丈「……育休、取りに来ただけやから。」

流星「1年、」

丈「1年。」

流星「戻ってきますか。」

何も言わない丈さんと向き合って感じた。

きっとこの人には

ここに戻ってくる気はない。

流星「…丈さん。」

丈「、おう。」

流星「丈さん、。」

丈「…おう。」

きっと、この人は。

現実を捨てて、

どこかへ逃げてしまうに違いない。

丈「……俺行くわ。」

流星「何処に。」

丈「もう行くから。」

流星「待ってください。」

俺は丈さんに歩み寄った。

丈「あかん。」

流星「…待って、」

丈「じゃあな。」

人気の無い廊下の隅。

後ずさりする丈さんを

離したらあかん気がして追いかけて。

流星「丈さん…！」

俺は。

丈さんの腕を掴んだ。

・

丈「……っっ、ひ、っっぅぁ、ああっ！？！！」

・

その腕から弾かれて、

俺は地面を失った。

・

流星「っ…うぁぁあっ！！！」

・

大袈裟なまでに声が出て

身体は後ろに飛んで行く。

・