貴方の綴れに生命の音を (ページ43)

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(丈side)

奇しくも、

気づかない内に飛んでいた意識は

朝になると戻ってきていた。

白い病院は、

白い和也とリンクして。

黒い廊下は

きっと俺の心だった。

これが、

和也が死んだ、次の日の朝。

・

大吾「丈くん。」

丈「…ごめん。」

大吾「ううん、休んだ方がええ。」

俺の様子を見にやって来た大吾に、

気の利いた一言も言えない。

和也の家族は一晩中病院に居てくれて、

うちの両親は星空を連れて家へ。

俺はこの一夜をベンチ一脚で過ごしていた。

丈「お義母さん達は…、」

大吾「和也のとこ居るよ。」

薄黄緑の長椅子の端と端に座って

俺と大吾はふたり俯く。

浮腫んだ目の違和感から

俺は目元を手でゆっくりと揉んだ。

大吾「…これから、一緒に警察行くって。」

丈「…、。」

大吾「俺らは、飛鳥のところ行こか。」

その手でゴシゴシと擦っても

涙は一滴も出てこない。

丈「………っ…は、ははっ…、、」

俺がおかしくなってる。

自分でも分かっていた。

丈「ぁはっ…はははっ…、っ…」

人は面白い時だけ笑う訳では無い。

面白くない状況から逃げたくて、

苦しい現実から逃げたくて、

壊れてしまうその前に

自分を守るために笑うのだ。

大吾「…丈くんあかんよ

目、もっと腫れてまう。」

目玉が取れてしまうくらい擦りながら

意味もない笑い声を上げて。

目の前が真っ暗なのが

ものすごく心地よかった。

この目に映る景色、

この世界自体を見ることが

まるで拷問のようにも感じたから。

丈「っ、ふっ…はははっ、…、…」

大吾「丈くん…、っ…」

身体がふわふわする。

このまま、和也の元へ行けそうなくらい。

笑い死んでしまうような、

そんな予感がした…。

・