貴方の綴れに生命の音を (ページ30)

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恭平「ちょっと、ええすか？」

メインも終わって、デザートの前。

白い小皿を4枚持った恭平がやって来て言った。

恭平「これ、良かったら。」

一人ひとりの前に置かれたのは、

飛鳥「あ！」

星空「ローストビーフや！」

……和也の、得意料理。

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恭平「もう今は、店では出してへんけど…。」

皿には3切れの肉。

周りはソースで飾られている。

恭平「……和也くんのレシピ通り作っても、

これだけは全然再現出来んくて。

やけど今日は今までで1番近い味になったから…

やから、食べて欲しいな〜…って。」

肉々しい焦げ目に、

中は綺麗なピンク色。

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丈「いただきます。」

大吾「うん、いただきます。」

他のものより肉厚。

しっとりで、柔らかくて。

少しニンニクの効いたソースは

トゲのない、丸く優しい味。

飛鳥「おいひい！笑」

星空「おれ、もっとたべる！」

恭平「ほんま？嬉しい笑」

……あ…これ。

これ。。

丈「和也の……」

大吾「うん。。笑」

肉を口に持っていく手は止まらず、

噛み締めて…ゆっくり噛み締めて、飲み込んだ。

恭平「いつもより、
ちょっとソース甘くしたんすよ。」

大吾「…甘く…？」

恭平「ゆーても、
ほとんど味は変わらんくらいなんすけど…

大人が食べても甘いとは思わへんけど

子どもが食べても辛いとはならへん、

そんな絶妙なライン。」

和也の味…

風化してないと信じたい俺の記憶。

これは、俺がずっと食べていた味。

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