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ほとけのざは相変わらず
「CLOSED」の札が掛かったままだった。
扉は開いている。
ここに彼が居るから。
扉の上に付いたベルは
何も無い空間で高らかに響いた。
流星「きょろちゃん。」
ホールはもぬけの殻で、
厨房には電気がついていた。
トントン、と軽快にリズムを刻む。
鍋底に金属が当たる音がして、
俺は息を飲んだ。
火にかけられた野菜たちの
水分が飛ぶ音がする。
水が沸騰して、
吹きこぼれた音もした。
日常のほとけのざの音が、
そこで叫んでいた。
恭平「…、へい、こぼれ、…るやん、か」
恭平「ごめん、かず、くん…、
これ、…や、さぃ、きり、おわ、…た…」
恭平「ん、…ほな……きょ、いは…
…ソ、スつく…って」
恭平「わか、た…、」
蚊の鳴くような声で、
恭平が和也くんと会話している。
目の前には皿が数枚。
最近は厨房全体を任されることもあった
あのきょろが作ったとは思えないほど。
お世辞にも
美しいとは言えないメインディッシュだった。
和也くんは居らんのや。
その現実を俺たちに突きつけるには
丁度いい材料だった。
もともと細い身体は更に、
心許なくなっている。
薄い肩を両手で持つと
軽い身体を抱き寄せた。
流星「きょうへい…、。」
きょろは手を止め、口を噤み、
時が止まったようにその場を動かなかった。
流星「きょろちゃん。、っ…」
恭平が崩れ落ちて、
そしたら声を出してわんわん泣いた。
俺も泣いた。
2人で泣いた。
ソースの焦げた匂い。
恭平「……かず、くん、かずやくん、……っ…」
苦しいな、つらいな。
きょろちゃんの背中を摩りながら、
ずっと呟いていた。
流星「流しちゃえ、ぜんぶ。」
全部全部。
涙と一緒に流してしまえ。
泣きたい時は泣けばいい。
流星「戻って来れるなら逃げてええから。」
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のあ - 頑張ってください〜!!更新待ってます!! (2023年1月21日 11時) (レス) id: c5462c43aa (このIDを非表示/違反報告)
まつだいら(プロフ) - のあさん» 遅くなりました!💦 今後もだいぶ更新する間隔が開くと思います……すみません!その分勉強頑張ります! (2023年1月20日 23時) (レス) @page42 id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)
のあ - 更新待ってます〜!! (2023年1月14日 13時) (レス) id: c5462c43aa (このIDを非表示/違反報告)
まつだいら(プロフ) - のあさん» 本日、更新予定です!返信遅くなりすみません💦本年もありがとうございました! (2022年12月31日 20時) (レス) id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)
のあ - 次更新するのっていつですか?教えてほしいです✨ (2022年12月31日 8時) (レス) id: d683609e2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつだいら | 作成日時:2022年10月3日 20時