貴方の綴れに生命の音を 番外編

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丈「……、、」



目の前に居たのは

俺の持ったスティック状の人参を貪る……



丈「うわぁぁ！！！獏！！」



周りの目線が俺に集中して、


圧倒的不審者の俺は

そこで尻もちをついたまま動けなかった。



ざわざわと音がするこの空間で


目の前の生き物はポリポリと

出っ歯を使い咀嚼している。





和也「丈くん、それカピバラ。」




はっと後ろを振り返ると


そこに立っていたのは

ベビーカーに手をかける大きなお腹の和也と、


ベビーカーに乗る小さな星空だった。



ふと、

向こうにあった写真撮影用のパネルを見つける。



“ようこそ！ 来園日 20○×年 12月 △日”




丈「……は…、？」




そんなはずない。


やってこの日は、




和也「そろそろ行くで？次はお馬さ、…っ」




……お前の、葬儀の日や。




和也「ちょ、丈くん！笑」



咄嗟にその身体に飛び込んで、


人目もはばからず、強く強く抱き締めた。


ただ不思議なことに、

いつもの和也の匂いはしなかった。


も〜なに〜？と和也が笑う。



丈「…かずやや、」


和也「うん？」


丈「和也。……星空。、それと、」



2人の顔を見た後

和也のお腹を撫でた。



それと、この子は。



丈「……あれ、」



思い出せない。



丈「あ…、、」



……いや、そうだ。



まだ。




──まだ名前がついていない……




和也「……ほら〜、はよお馬さんとこ行こ〜！」



久々の休日。


12月初旬の午後。


約束していた、動物園。


少し肌寒い空気に、太陽が優しく光を落とす。



丈「寒ないか？」


和也「うん！」



かなたもな？と少しズレていたひざ掛けを

掛け直してやる。



丈「よし、ほな行こか笑」



ベビーカーを代わると3人で、

ゆっくりと園内を進んで行く。




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