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目の前から消えたものは、
この世に片割れを置いて行く。
現に雨粒は
彼自身で描いた軌跡を
フロントガラスに残していた。
きっとこの原理は
現実でも非現実でも適用される。
乾いた硝子に打ち付けられた蛾は
羽の粉をそこに残すし、
ゲームで撃ち殺された人間は
自分の装備を箱に残すのだ。
しかし俺が
非現実で人を撃ち殺す快感を忘れた後、
何が残るのかは分からない。
バーチャルに置いてきた殺意は
現実世界に残るのか。
この世界で抱いた残虐な意志を
画面の中に封じ込めたはずなのに。
丈「……みっちーはさ
死ぬ時、こっちに何残したい？」
もの凄く、不毛な質問だと思った。
駿佑「死んだ後ここに何を遺すか、ですか？」
丈「おん。」
何を残すか選択も出来ない
愚鈍な人間の愚かな問。
駿佑「魂、ですかね。」
丈「それ結構本体ちゃう？」
それに答えたみっちーは
駿佑「無理かぁ。笑」
少しの希望を含んだ眼で
俺の方を見た。
駿佑「でも俺、まだここに居りたいなぁ。」
目の前の信号は赤色を灯し、
俺はじんわりとブレーキを踏む。
駿佑「俺は神様に無理言って、
魂を何個にも分けて、
それを色んなところに宿して、
それで……ずっとこの世界を見てたい。」
丈「ハリー○ッターやな。笑」
駿佑「魔法使えるんやったら
どうにかして生き長らえますよ。笑」
怠けたワイパーのせいで
フロントガラスには雨粒がびっちりと乗り、
全てが心臓を持つように
赤を反射させていた。
丈「そこまでして、見たいものあるん？」
駿佑「うん、あります。」
雨粒の臓物が一斉に緑色に変わり
次の瞬間、ワイパーがその生命を刈り取る。
駿佑「……人間みんな、
自分やない誰かを遺して死ぬんやもん。」
進み出した車体に、
水は全て悔いなく散って行った。
駿佑「俺は何も残らんくてええから、
俺やない人たちを近くで見守っときたい。」
俺は今日久しぶりに、強く唇を噛んだ。
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まつだいら(プロフ) - Rioさん» コメントありがとうございます！また落ち着いたら、色々と書いていきたいです！読んでくださりありがとございました！✨ (2022年8月19日 16時) (
レス) id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)
Rio(プロフ) - 主さんのお話大好きです！！ぜひ裏設定も読みたいです！！ (2022年8月18日 16時) (レス) @page45 id: 9d6c92ab72 (このIDを非表示/違反報告)
まつだいら(プロフ) - 莉里さん» ありがとうございます！オメガバは需要が少ないと思っていましたが沢山の方に読んで頂けて本当に嬉しかったです！また戻ってこれた際は是非、よろしくお願いします！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - 完結おめでとうございます。オメガ設定は数少ないので、とても好きな作者さん、作品のお一人です。いつか戻ってきてくださることを楽しみにしています。 (2022年8月12日 21時) (レス) @page45 id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
まつだいら(プロフ) - ayさん» ありがとうございます！読んでいただけて、温かいコメントも頂けて本当に嬉しいです！もう少しで完結ですので最後までお付き合いお願いします！ (2022年7月31日 0時) (レス) id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まつだいら | 作成日時：2022年7月19日 19時
