弐 ページ2
『聞き間違いじゃないの?幻聴とか。疲れてるんじゃない?』
[ちーがーう!!本当に聞こえるの!!」
お願いだよぉぉ、と叫ばれる
耳が痛い
[お願い!そうだ!クレープ!クレープ奢ってあげるから!お願い!]
『わかったわかった。』
近所迷惑だから静かにしなよ。と言い残し電話を切る
『さて。』
寝るために着た寝巻きを脱いで着替える
こんな時間に家を出たら普通なら怒られるだろうが、
家には生憎両親がいない
父親は浮気相手と蒸発、
母親も数年前、1つ下の妹を連れて出て行った
私を育ててくれている祖父母も職場で寝泊りしているためここにいるのはわたしだけ
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家から十分ほど歩いた所にある小さな神社
ボロい訳ではないが人が出入りしている事は殆ど無い
いや、たまには見るけど
因みに東の方の赤い屋根の家がさっきの友人の家だよ
神社には灯りがほとんどなく、
一つだけ古ぼけた提灯がついている
意外と怖いな、なんて思いつつ携帯のライトをつけながら神社へ入った
神社の境内には狐の像がいくつも置いてある
数えてみたら9つの像があった
狐の神様でも祀っているのだろうか
神社の名前が記されている石もあるが名前が読み取れないほど薄汚れている
それなのに境内はつい最近掃除されたかのように綺麗だ
音なんてしないけどな、と思いつつ
鳥居をくぐりお社に近づく
『?!』
と、突然突風が吹き荒れ、まわりの木葉が舞う
シャランと鈴のような音が鳴り響くと同時に
風がピタリと止んだ
?「こんな神社に尋ね者なんて珍しいな。」
静かになった神社に響く低い声
バッと振り返ると背後に誰か立っていた
?「人間がこんな所に何か用か。」
美しい金色の髪
髪と同じ色の耳と尾が生えている
見るからに人では無い容姿
『え、え、』
?「そんなに驚く事ないだろう?用があって来たのではないのか?」
赤色の瞳を細めて可笑しそうに笑っている
?「それとも、なんだ。悪戯にでも来たのか」
彼の手がスッとわたしの頰に触れる
ゾクっとした悪寒を感じ、背筋が凍る感覚を覚える
わたしの顔を覗き込む目は笑っていなかった
本能が早く逃げろと言っている
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作者名:とり子 | 作成日時:2019年10月30日 20時