[雪代縁]放っておけない

42話 ページ43

.





それからというもの、雪代さんはなんだか毎日忙しそうだった



誰かと電信でやり取りしている姿を何度か見かけたが、恐らく武器組織絡みではなく、雪代さんの人誅に関係することだろう

普段より物腰が低くて口調が柔らかくて、なんだか別人のようだった







.









上海での暮らしも残すところあと1週間


すっかり私物だらけになった自室を少しずつ片付けていく

大陸風の服飾文化を学びたい、という当初の目的は 想定よりも遥かに早い段階で、低コストで達成することが出来た

それもこれも無償で宿を提供してくれた雪代さんのお陰だ


雪代さんが居たから、ほとんど言葉の通じない清国でもなんとかやっていけたし、心細い気持ちになることも無かった

たまに怖い時もあったけど、それ以上に不器用なりにわたしに親切にしてくれた









雪代さんは、わたしにとって大切な人








お別れは寂しいけれど、雪代さんの悲願だった抜刀斎への復讐を止めるつもりは毛頭無い


ついて行くことも、見届けることもしない。雪代さんの弱みになるようなことだけはしたくない









雪代さんとの楽しい日々は、ひと旅の思い出として大事に胸にしまっておく







.









だから、あと1週間。何も変わらない楽しい日々で…









.









.









夜更け、いつものようにお酒の瓶を片手に持てば 雪代さんの部屋の扉をノックした

43話→←41話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す