[雪代縁]放っておけない

3話 ページ4

姉さん、…姉さんって



この人日本人だったのか！




｢たしかにわたしも日本人ですけど、人違いです。お姉さんじゃないですよ



それより、この辺りで安い宿を教えて頂けませんか？｣



さっそく同じ国の人と出会えるなんてツイてるな

付け焼き刃の中国語じゃやっぱり不安だったし



ニコ〜…と愛想良く笑みを浮かべて男の返答を待つ









しかしこの男、わたしの言葉なんて全く聞こえなかったかのように



｢帰ろう、姉さん｣



と、微笑んで、わたしの手首を掴んだ






背筋がゾッと冷たくなったのを感じた



グ、と目一杯チカラを込めてもふりほどけない


あぁこれ、駄目なやつだ。家族とか恋人とかのフリして誘拐される 栄えた街でよくあるやつだ…


大声、大声さえ出せれば大丈夫
これだけ通行人が沢山いるんだから、誰かが不審がってくれるはず

中国語が喋れなくたって運良く日本人が近くにいるかもしれないし。そしたら憲兵さんとかに知らせてくれるはず

絶対、大丈夫…





｢…助けて！


助けてください！


この人全然知らない人で…ッ｣






うなじに強い衝撃が走った。たぶんだけど、わたし、このまま意識を手放す

憧れの街に来たばかりなのに…何でこうなっちゃうかなぁ









なんでかなぁ……




地面に倒れる感覚は無かった。

頬にサテンのようなツルツルの布地の感触を感じる

あの男の人に抱きとめられたのだろうか

足に感覚がない。自立もきっと出来ていないのだろう。
そのまま視界はどんどん暗くなっていって、わたしは意識を手放した。

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