26話 ページ27
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また、いつものように 重たい足取りでお風呂に入り、ふかふかのタオルで濡れた髪を乾かす
白色の小袖に腕を通せば、化粧を施し 仕上げに手首に香水を振った
いつもの工程だ
あんな話を聞いたあとだと尚更…
ハァ、と大きくため息をついて雪代さんの部屋へ向かう
コンコン
ノックはいつも2回
「どうぞ」と扉の奥から雪代さんの声がしたので、ゆっくりと部屋の中に入った
1歩1歩 歩みを進めてベッドに腰掛けている雪代さんの隣にちょこんと座る
「…今日、久しぶりに昔のことを振り返ってみたんだ」
「…」
今頃抜刀斎は何をしているんだろう、姉さんのことなんて忘れて 姉さんの代わりでも見つけて楽しくやっているのだろうか
憎い
憎くてたまらない
憎い、憎い、この手で殺したい…
ぽつりぽつりと、抜刀斎への恨みを語る雪代さん
わたしは黙って目を伏せる
「…でも、たまに思うんだ」
「…?」
「姉さんを殺したのは紛れもなく抜刀斎。だけど…
あの時、山に入るのを俺が止めれていれば…、抜刀斎の刃から俺が姉さんを守れていれば…
今頃…姉さんは……」
声を震わせて 雪代さんはそう呟く
目には大粒の涙が溜まっていて、俯いた拍子に 床にポロッ、と零れた
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もう、ダメだ
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もう、なりふり構っていられない
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身体が勝手に動いた。雪代さんの手を取り、そして引き寄せる
わたしは身体の赴くまま、雪代さんを強く強く抱きしめた
振りほどかれたって絶対離してあげない。ぎゅうううううううう、って力いっぱい、包み込むように抱きしめた
これは契約違反だ、怒られても仕方がない。
それでもじっとしていられなかった。目の前で泣いている雪代さんを放っておくなんて もうできない。
「泣かないで…」
ぽんぽん、と頭に手を添えてあやす
気づけばわたしまで泣いてしまっていたようで、声が少しだけ震えていた
殴られるのも拒絶されるのも覚悟の上での行動だったが、少しだけ予想外
腕の中の雪代さんは「フ…」と少し顔を綻ばせれば
「貴様は本当に…、姉さんじゃないんだな」
と、小さく笑うのだった
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ぽ - 実写映画を見て縁さん……♡となったのに夢小説がぜんぜん見当たらなくて泣いてたのでとっっっても大事に噛み締めて拝見させていただきました!!短編でも良いのでまた縁さん御相手のお話が読みたいです♡ (2023年3月7日 17時) (レス) id: 3ffd0127b7 (このIDを非表示/違反報告)
りん - 心の支えです。続き楽しみに待ってます…!! (2022年10月25日 1時) (レス) id: d1feb6ce39 (このIDを非表示/違反報告)
ももか - 48話まで一気に読ませていただきました。原作ともに真剣縁、実写映画も愛しているものです。続きも楽しみにいます。とてもステキな作品です。 (2021年6月25日 1時) (レス) id: cd77308074 (このIDを非表示/違反報告)
ぽき - 本当に本当に書いてくださってありがとうございます。最高です、、、 (2021年6月23日 22時) (レス) id: 26efc0f3b7 (このIDを非表示/違反報告)
武山(プロフ) - unnkochanさん» ありがとうございます!映画派の方にも漫画派の方にも楽しんで頂けるよう頑張ってかきます!!"(ノ*>∀<)ノ (2021年6月17日 23時) (レス) id: ec0c3a6854 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:武山 x他1人 | 作成日時:2021年5月9日 22時