[雪代縁]放っておけない

14話 ページ15

上海に来て、早3週間が経過

今日のわたしはというと、恥ずかしながら明らかに治安の悪い街に迷い込んでしまい、絵に描いたような上海のゴロツキ4、5人に囲まれ 雪代さんに首を締められた時の10倍命の危険を感じている



｢日本人の餓鬼が1人でこんなとこをふらつくなんて、襲ってくださいって言ってるようなもんだよなぁ｣


昨日しごかれながら死ぬ気で中国語勉強したから分かる…！今わたしのこと日本人の餓鬼って言った



｢20歳！大人！｣


カタコトの中国語で何とか返答する


ゴロツキはハッ、と鼻で笑うとわたしの手荷物を奪い、財布を開いた



｢ホントだ、財布の中身は一丁前に大人だなァ｣


｢ちょっと、返し…ッ！んむ…っ｣



財布を取り返そうと手を伸ばした瞬間、喉元を掴まれ そのまま壁に打ち付けられる


｢い…｣


いったーーい！！！！！！！！
後頭部が勢いよく硬いコンクリートの壁にぶつかり、頭がグワングワンする



｢も、お金はあげますから

手を離して｣


少し痛手だが、財布に入れている金額が全財産な訳では無い
ここは大人しく引き下がって安全に帰してもらうのが1番だ




｢何言ってんだ？お前

あげます なんてそんな立場じゃないだろ？ 俺らに捕まった時点でお前の金もお前ももう俺らのモンなんだよ｣


｢えっ…｣



これは……やばいやつだ


サァー…と、血の気が引いていき、情けなくも唇はカタカタと小刻みに震えた


脚の間にゴロツキの足が差し込まれ、手は着物の襟元にかけられる



｢たっぷり味わってから市場に売り飛ばしてやるからな…｣


耳元でそう呟かれ ゾワゾワ〜…と身体に鳥肌が立つ

どうにか、どうにかして助かる方法…

ハァ、ハァ、と恐怖で呼吸が小刻みになる

誰か通行人はいないのか と、辺りをぐるりと見渡した

ふと、一瞬だけ

路地を抜けた先の広間に見慣れた橙色の服を着た男の人が映った気がした



｢…！？ゆ、雪代さん！！｣


つい大声を出して呼び止めてしまう



こちらの声に気が付いたのか、男の人は少し驚いた顔でこちらを見やる
やっぱり雪代さんだ…！

助けてください！と目で全力で訴えると、雪代さんは一切表情を変えず目線を戻し、また元の進行方向に向かって歩き出した




オイオイ、オイオイオイオイ…






｢そこは助けてくれるとこでしょー！？！？｣



あまりに冷酷なその判断に、柄にもなく大声をあげてしまった

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