検索窓
今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:82,130 hit

46. ページ47

.



屋根の上でお茶を飲みながら



ぽつり ぽつり たわいも無い事を話す




芥川くんは思っていたよりもちゃんと答えてくれて



律儀という印象を得られる




「そういえば、何か用事があって来たの?」



「………………」




すっかり話し込んでしまって忘れていた



彼がわざわざここに来るなんて、何かあるとしか思えない




芥川くんは意外と素直で 、私の話に耳を傾けてくれる



その理由が 太宰と繋がりのある人間だからなのか分からないけれど





「礼を、言いに来ました……」




コホッと咳をしながら 小声で言うと おずおずと私を見る




お礼って、何の事だろう。首を傾けると「先日、ご厄介に…」とだけ言い黙ってしまった




あぁ 前に芥川くんを看病したことかな。あの後会ったのは私が拉致された時で会話をする暇はなかった





「私の方こそ、助けてもらったよ。ありがとう」



「いえ……」




ふいっと目を逸らされる。あまり見ていなかったけど 彼はかなりの細身。ちゃんと食べてるのかな




太宰も作之助も、マフィアにいた時は今ほど食べてなかった





「芥川くん、今日は何か食べたの?」



「……………何故そのような事を」




「うん、食べてないんだね」




私は一旦屋根から降りて、昨日作ったパウンドケーキを持ってくる




ベランダに戻ると 芥川くんは無言のまま羅生門で私を持ち上げてくれた




「便利な異能力だね」



「これが……?」



「? うん、 はいどうぞ」




眉間に皺を寄せながら睨まれるけど、気にせずパウンドケーキを渡す




「何も食べないよりマシだよ」




パウンドケーキを見つめたままじっと動かない芥川くん。「嫌いだった?」と聞くと「いえ…」と首を振る




「それに、自分の体調をきちんと管理しないと本領を発揮する時 難点となる事もあるよ」




「って、私にそんな事言われても嫌だよね」




彼にとって私は"旧知の仲"でも"指導する上司"でもないのに




偉そうな事言っちゃったかな




「…………頂きます」




あれ、怒ってない



一口食べると 目をカッと開いてまたパクリと食べ始めた。




「無果実のパウンドケーキだよ」




「…………美味です」




「よかった」




それからまた ぽつり ぽつりと話して



芥川くんとの不思議な夜を過ごした



.

47.→←45.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (50 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
136人がお気に入り
設定タグ:文スト , 織田作之助 , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

柚子の香(プロフ) - キリカさん» いえいえ!頑張ってくださいね! (2018年8月27日 17時) (レス) id: 174fdb4db8 (このIDを非表示/違反報告)
キリカ(プロフ) - 柚子の香さん» ありがとうございます。ほんとだ"敦"ですね。すみませんありがとうございます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 0facb3a838 (このIDを非表示/違反報告)
キリカ(プロフ) - 唯我独尊丸さん» わぁ ありがとうございます。うれしいです! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 0facb3a838 (このIDを非表示/違反報告)
柚子の香(プロフ) - 凄く面白い!ただ、ひとつだけいいですか?漢字が『淳』では無く『敦』だと思います。なんかすみません。この作品大好きです!更新楽しみにしてますね! (2018年8月27日 0時) (レス) id: 174fdb4db8 (このIDを非表示/違反報告)
唯我独尊丸(プロフ) - 凄く面白かったです!イッキ読みしちゃいました笑更新頑張って下さい!楽しみにしてます! (2018年8月26日 23時) (レス) id: 2689cacca6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:キリカ | 作成日時:2018年8月22日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。