世界は麗らか【文スト】

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日曜日の夕方



夕飯の材料を買って 私はヨコハマの帰路をついていた



「今日は安かった〜」



お店に入ったら丁度タイムセールが始まり、いつもはそんなに買わないけど欲に負けて買ってしまった




「それにしても、買いすぎたかな…」




よっと、抱え直そうとすると 途端に両腕が軽くなる




「随分買ったな、今日は」



「あ、ありがとう 安かったから つい」




見上げると、荷物を持ってくれる作之助
気にせず歩き出すから 私も後を追う




「作之助、今日何食べたい？」



「そうだな…」




考え込む作之助に ｸｽｯと笑ってしまう 笑った事を不思議に思ったのかこっちを見た



「どうした？」



「なんでもないよ、行こ」



「なんだ、それ」




私の返事にはにかむように笑って 歩き出す





家に着いて ご飯を一緒に作って 食べて、2人で背中合わせに座り 小説を読み始める




ﾊﾟﾗ…




私の部屋に 本をめくる音だけが響く





本から視線を外すと 時計の音や 風の音が耳に入ってきた



集中してると、ほんと聞こえなくなるんだよね
不思議なことに



開いたままの本をお腹に乗せて作之助にもたれると心音が体に伝わってくる





ﾊﾟﾗ…





どっぷりと本の世界に入っちゃってるなぁ


この空間は心地いいけど



ふと起き上り作之助を見ると、大きな背中を少し曲げて文章に目を落としていた




なんか、ちょっかいかけたくなる



その真剣な目に余計うずうずしてしまう



イタズラ心が勝ってしまい そっと手を伸ばすと柔らかな赤毛が揺れる




「ふふ」



「どうした？」



思わず笑うと 気づかれてしまい作之助はこっちを見ていた




「なんでもないよ」



「さっきもそう言ってはぐらかしたな」




そう言うと 言うまで離さないと言わんばかりに手首を掴まれる



これはもう素直に言うしかない



「だって、あまりにも集中してたからちょっかいかけたくなったの」



「そうか？」



「うん、それ面白かった？」




読んでいる本を指差すと「ああ」と言って私に差し出した




「Aに似てるな」



「え？私？」




登場人物が私に似ているのだろうか、そんな疑問を持つと作之助は続けた




「お前を見てるみたいだ」



「え、そうなの？」




へぇ〜 と言いながら 表紙を見る
この物語の主人公が私に似てるなんて、




「なんか、本の中にいるみたい」




嬉しいな、と言うとふっと笑った





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