俺が好きになったやつ 【影山飛雄】

・ ページ39

.



影山side





「えー この公式を当てはめて計算し、」





"狙ってる男子なんて山ほどいるでしょ"




「…」






訳の分かんねェ数学の授業中




月島の言葉が、頭から離れねェ
ノートにはいつの間にか意味の無い線が大量に書いてあって驚く







「なぁ、影山が起きてるぞ」ﾋｿｯ



「ほんとだ…珍しい〜」ﾋｿｯ







周りからの視線よりもあいつの事が気になる
なんなんだ、このムカムカする感じ

焦りに似た感覚





「…くそ」






『飛雄』






俺を呼ぶ声を思い出す
聞くたびに 心のどこかでほっとする




俺に向けられる言葉が、笑った顔が
自分だけに向けられたもんだと思って





けど、他の奴だってあいつと話すし
俺じゃなくたって笑わせる事は出来る




あいつを必要としてる奴は、きっと大勢いる






何で今更、そんな当たり前の事で苦しくなるんだよ
別に俺だけのもんじゃねェだろうが





そんな当たり前の事実が
こんな苦しいのかよ





「…」



『好き』




他の誰が あいつと一緒にいても
知らねェ奴が、あいつを好きと言っても






俺が一番、あいつを好きな自信はある






「…ボケェ」






全然、余裕ねェじゃねェかよ俺






……………




.



夢を見てる




ふわふわと揺れているのは、着ている服なのか
それとも体が浮遊しているのか分からない




けれど、とても夢見心地
当たり前か これは夢なんだから




目を瞑って開けると 今度は景色が変わる
昔の時代なのか 袴姿の私。気づいたら歩いていて




学ランを着た彼が目の前を歩いていた




『飛雄、』



伸ばした手は空を切った
彼が止まり 振り返った所で映像が変わる





『あれ、』




山と湖 遠くの方に羊の群れが見える
景色の良い 田舎の外国のようだ





『飛雄、どこ?』




長いスカートをたくし上げて芝生を歩く
頬に当たる日光がやけにリアルだった




今度は村人の格好の彼が 湖のほとりに立っていた
嬉しくなって駆け寄り、手を伸ばした所で映像が切れる





『…ｯ』





今度は繁華街の街並み
巡るましく人が多い中で 人混みに紛れ込む彼の背中を見つけた




『お願い、まって!』




どうして、止まってくれないの?
なんで 私の手は届かないの?




もしかしてこれは現実?




『飛雄、まっ…!』





ﾌﾟﾂﾝと、映像が切れたと同時に目を開ける
曲がった背中を起こす同時に、涙を拭いた




.

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す