俺が好きになったやつ 【影山飛雄】

・ ページ35

.





ぼろぼろと、涙が止まらない





「朝ひ「名前、」あ?」


「名前で呼んで…?」


「…A」





あぁ すごい





今まで数えきれないほど呼ばれてきたはずなのに


彼が言うだけで むず痒くて嬉しい



まるで魔法のようだ






溢れる涙をごしっと親指で拭かれ
「これ、」と手紙を頭に置かれた






「恋人になるなら、俺はお前がいい」


「ｯ!」


「お前はどうだ?」






好きな人がそう言っている
そんなの、決まってる





「私も、それがいい」





思わずぎゅっと抱きつくと声に出ない驚きをする彼。慌てて離れようとすると逃がさないと言わんばかりに腕を回された






少しぎこちなく、遠慮気味に力を込めてきた
鼓動が聞こえて 彼の匂いがいっぱいに広がる





慣れていないのかどうなのか
私が頭をぐりぐりと押し付けるとびくっとした






可愛い




なんて、思ったのは内緒






「なぁ、A」


「?」


「お前も、名前で呼べよ」


「!」





びっくりして思わず顔を上げると
口を尖らせて照れ臭そうにそっぽを向く彼




照れている あの彼が




なんだか意地悪をしたくなってしまうけれど
私も名前を呼びたい欲が勝ってしまった




つん、と指で頬をつつきこっちを見た瞬間




「飛雄」


「!」


「あなたが好き」


「おう」






私が好きになった人は、
バレーが好きで バレーが上手くて




バレーの事ばかり考えていて





初めて会った時から
彼の頭の中はバレーでいっぱいだった





それでも、私は
バレーを好きな彼を好きになった





そして彼は
そんな私を好きだと言ってくれた






「幸せ」


「? そうか」


「うん そう」


「俺もそうだ」


「!」




彼は、



私が好きになった人



.

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す