誘拐犯取り扱い説明書【青×桃】

8.仕事を見ること ページ8

桃side



「、別に、大丈夫やで？」

「大丈夫、ちゃう、」

「大丈夫、望が心配することちゃうから」



そう言って抱きしめてくる流星の膝の上で、
ぎゅーっ、と思いっきり抱きつくと、
流星はありがとう、って。



それは、何に対して？



流星を気にかけたこと？
途中で深堀りするのを止めたこと？
流星のために俺が泣いたこと？


流星が何を考えとるかは、
1年経った今も全くわからへん。



「疲れた？寝てええよ」

「んん…流星も、」

「俺は仕事せなあかんから、な？」



じゃあここで寝る、と、
流星の膝に寝転べば、
それやとパソコン取りに行かれへんやんって。



確かにそうやけど、
俺は今流星から離れたくない。

今離れたら流星はそのまま、
空気に溶けて消えてしまいそうやから。


現実味がないことを言っとる自覚はあるけど、
今日の流星の雰囲気はそれくらい儚いんや。



「、抱っこ」

「はいはい、っしょ、と、」

「んふ、力あるなぁ、」



普通180ある男抱き抱えられる？

普通の人がどんなもんか知らんけど、
俺は少なくとも流星を抱き抱えるなんて無理。



「はい到着、帰りは普通に帰るで？」

「ん、」



そう言って歩き始めた流星に手を伸ばすと、
望らしいと笑いながら流星は立ち止まって。



別に、流星もこういうん嫌いじゃないやん。
俺も寂しさの解消になる。

やからしとるだけやもん。



「じゃあ、寝る、」

「ん、おやすみ」



そう言って、パソコンを右手で操作しながら、
左手で俺の頭を撫でるという、
なかなかに器用なことをする流星。



その顔を膝の上から見上げてみるけど、
そこらのイケメンとは、
比べもんにならんほどかっこいい。



アイドルと言われても納得出来る整った顔に、
低くて落ち着いた声。

ダンス習っとったって言いよった気もするし、
ほんまにアイドルとか、
そういうキラキラした世界が似合う気がする。



まぁ、やっとることは誘拐と監 禁、
あと俺にはよくわからん、
家でできる仕事くらいなんやろうけど。



「なんの仕事？」

「んー…コンサートの構成とか、色々」

「、へー…」



そんな仕事してたんや。

誘拐される前までは、
結構ライブとかも行っとったけど
構成とかの人のことは考えたことなかった。



「俺、結構有名やねん、この世界では」

「すごい人なんや」



すごかったら、
望のこともバレそうな気がするけどなー。

なんて、呑気に言っとるけど、
やっとること犯罪やで？



まぁ、そんなん怖くてよお言わんけど。






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