30日目の雪、最初の桜 ページ30
懐かしい声が聞こえ、目を開こうとした。しかし、私の目は閉じられたまま、開くことができなかった。
「どうしてもっと早く呼ばなかったんですか。」
「…だ、って。」
「貴方の兄のほうが、力が強くなったからって言いたいんですか。」
何も言うことができなかった。代わりに、開くのも億劫な目を開けた。
赤くぼやける視界には、確かに永久狐と牛沢の姿が確認できた。
「だからと言って、私を呼ぼうとすることさえしなかったのは感心できませんねぇ。Aさんがいなくなったら、私も退屈な日常を送る羽目になるんやけどな。」
そう言って、私の頬を撫でる感覚が伝わった。以前と変わらない冷たい手がとても心地よかった。そのまま寝てしまいそうな程には。
けれど、永久狐が今どんな表情をしているのかさっぱりわからなかった。もう一度、顔をしっかり見たいと思うのに、赤く染まった視界と傷ついた眼球のせいで見ることができない。
「何やともあれ、Aさん。貴方はよく頑張りましたよ。」
「な、にも…でき、なかった。」
「何言ってんだ。お前は本当によくやったよ。…あぁ、お前もしかして目が見えないのか。」
小さく頷いてはみたものの、伝わったのかはわからない。ただ首が少し動いた程度に思われたかもしれない、と思ったものの牛沢はわかってくれたようで、そうか、と言った。2人の顔を見れないのが残念で仕方が無い。
「今だけ俺の目を貸してやる。それでAがやったこと全部見てみろよ。」
牛沢の手が私の瞼に触れるのがわかって、反射的に目を閉じた。何が起こっているのかわからないし、体の痛みも消えることはない。
牛沢の手が私の瞼から離れるような感覚がして、目を開けた。
鮮明になった視界、綺麗な透き通るような色の青空。
そして、周りの木々の花は全て開花し、桜が舞っていた。
白い雪に、桃色の桜の花びらが積もり始めていた。
「Aさん、貴方がこの街に桜を降らせたんですよ。」
涙を流すことが嫌で、思わず目を閉じた。途端、私の意識も遠く離れるような感覚もした。
「本当に、私は最後にAさんに仕えることができて幸せでした。」
「A、あの世でまた会おうな。」
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うずら(プロフ) - 月音さん» コメントありがとうございます！この二人の実況はとても面白いので是非見てください。来世という言葉が実現するかどうかは…？ (2016年12月19日 17時) (
レス) id: 040f1457a4 (このIDを非表示/違反報告)
うずら(プロフ) - 白亜さん» ダントツトップとは勿体ない言葉ありがとうございます！『来世』という言葉が実現するかどうかは…？ (2016年12月19日 17時) (レス) id: 040f1457a4 (このIDを非表示/違反報告)
月音 - コメント失礼します！完結おめでとうございます!!この二人はあまり知らなかったのですが、とても面白かったです!!｢来世｣は勝手ながらに期待させて頂きます…!この設定でまた小説見れる日を楽しみにしています!これからも頑張ってください！ (2016年12月17日 23時) (レス) id: 8263afd0e3 (このIDを非表示/違反報告)
白亜 - 完結おめでとうございます！ 陰陽師設定のものはよく見ますがこの作品がダントツトップです！ 『来世』という永久狐さんの言葉に勝手ながら期待させていただきます！ (2016年12月17日 23時) (レス) id: ac5b05f6eb (このIDを非表示/違反報告)
うずら(プロフ) - 鶴さん» コメントありがとうございます！世界観などは「現実っぽいけど、非現実」ということをイメージして書いていました。次回作にも期待していただいてありがとうございます！機会があれば、書いてみようと思います。 (2016年12月17日 22時) (レス) id: 040f1457a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うずら | 作成日時：2016年11月28日 0時
