4.女王の死神 ページ5
ジ)「でしたら…さっそくアレを引き取っていただけないかしら?」
ア)「どちらにあるんです〜?」
ジ)「メ、メイドがご案内いたしますわ」
メイド)「! お、奥様…!」
ジ)「っ早く行きなさい!…まさか嫌だなんて言うつもり…?」
メイドの怯えた様子が、夫人の怒りに触れたらしい。
しばらくキョロキョロと視線を泳がせたメイドだが、やがて消え入りそうな声で返事をした。
メイド)「はぃ…」
地下室…――
足音が響く。
僕たちは、メイドが持つランタンの明かりを頼りに屋敷の地下室への階段を下る。
シ)「随分大きな地下室だな」
メイド)「はい。当主様は用心深い方。念のために非常用の食料庫や防空壕を所持しておいでです」
セ)「では、ご遺体もそちらに?」
メイド)「とんでもない!あんな不吉なものをご家族がご使用なさるかもしれない場所に、一時でも置いておくなんてできませんよ!」
メイドが導いた先にあったのは、木製の扉だった。
メイド)「小さいですが…“地下牢”になります」
シ)「? 地下牢?」
メイドは震える手で鍵を開けた。不気味な音を立てながら、扉が開く。僕を襲ったのは、凄まじい悪臭。そして…
シ)「ッ!?」
セ)「いけません」
セバスチャンが僕の目を覆ったが見えてしまった。小さな牢屋に敷き詰めるように並んだ遺体。その殆どが白骨化しかけていて、わずかに残った肉片には、蛆が群がっている。
メイドが嫌がる理由が分かった。
ア)「おやぁ…?お客さんは1人だって聞いたんだけどねぇ〜?」
メイド)「はい。引き取り頂きたいのは…アレです」
吐き気を押さえつつ、指の隙間から覗き見た。少女だ。少女が死体の寝床に横たわっている。
ア)「あの子だけでいいのかい?」
メイド)「え、ええ。あとは…その…身元が割れては厄介な方々ばかりですから…」
セ)「と言うと?」
メイドは問いかけに、さらに困ったように眉を寄せ、迷い迷いに口を開いた。
メイド)「実は…マッケンジー家は代々、女王陛下より、暗殺の任を仰せつかってまいりました」
暗殺…!?
メイド)「その目標は、英国に危害を及ぼすかもしれない可能性のある者…。送られてくるリストに基づいて存在を抹消するのです」
ア)「女王お抱えの殺し屋一家ってとこかい」
セ)「そのようなお家が…」
メイド)「在りました。女王陛下の裏…いえ、その裏側のさらに深層部に。それを知るのはほんの一握りの方々…。
いつしかマッケンジー家は“女王の死神”と呼ばれるようになりました」
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